
愛犬の耳を見たら、片方だけ急に厚く膨らんでいる。
耳たぶを触ると、ぷよぷよして水風船のように感じる。
耳の内側が赤く腫れ、犬が何度も頭を振っている。
このような変化を見ると、「虫に刺された?」「外耳炎?」「このまま様子を見ても大丈夫?」と心配になりますよね。
犬の耳が腫れる原因はひとつではありません。
特に、耳介と呼ばれる耳のひらひらした部分が急に厚く膨らんだ場合に重要なのが、耳血腫(じけっしゅ・aural hematoma)です。
耳血腫では、耳介の皮膚と軟骨の間に血液や液体がたまり、耳全体または一部分が袋のように膨らみます。触ると柔らかく、ぷよぷよ・ぶよぶよした感触になることがあります。
耳血腫そのものだけを見ると「耳の血管が切れただけ」に見えますが、なぜ血管が傷ついたのかを確認することが非常に重要です。
犬では、外耳炎、アレルギー、耳ダニ、耳の異物などによるかゆみや痛みから、頭を激しく振る・後ろ足で耳を何度もかくことで耳介へ強い力がかかり、耳血腫につながることがあります。
そのため、膨らんだ部分だけを処置しても、耳をかく原因や頭を振る原因が残っていると再び腫れる可能性があります。
一方、耳の腫れには耳血腫以外にも、外耳炎による耳道の腫れ、虫刺されやアレルギー、咬傷・外傷、皮膚の感染や膿瘍、耳道や耳介のできものなどがあります。
特に、顔や口元まで短時間で急速に腫れる、呼吸が苦しい、何度も吐く、ぐったりする、倒れる場合は、局所的な耳の問題ではなく重いアレルギー反応なども考える必要があります。
呼吸が苦しい、舌や歯ぐきの色がおかしい、意識が弱い、ふらつく、首が傾く、大量に出血している場合は、自宅で耳を冷やしたり押したりして様子を見ず、すぐ動物病院へ連絡してください。
また、耳血腫のように見えても、家庭で針を刺して中身を抜くことは絶対に行わないでください。感染、出血、痛みを起こす危険があります。
この記事では、犬の耳が腫れる時にまず確認したい場所、耳血腫の特徴、外耳炎・アレルギー・虫刺され・ケガとの違い、受診目安、動物病院で行われる検査や治療、自宅で避けたい対応まで詳しく解説します。

- 犬の耳が腫れた時は「どこが腫れているか」を確認する
- 耳血腫とは?耳が水風船のように膨らむ状態
- 耳血腫ができる原因は「頭を振る・耳をかく」ことが多い
- 原因① 外耳炎
- 原因② アレルギー
- 原因③ 耳ダニ
- 原因④ 草の種などの異物
- 原因⑤ 虫刺され・急性アレルギー反応
- 原因⑥ ケガ・咬傷・出血
- 原因⑦ 皮膚炎・接触刺激
- 原因⑧ 耳のできもの・腫瘤
- 耳血腫と外耳炎の腫れはどう違う?
- 耳血腫は放っておけば自然に治る?
- 耳血腫を自分で針で抜いてはいけない
- 耳を押す・揉む・マッサージするのも避ける
- 耳が腫れた時にすぐ受診したい危険サイン
- 救急ではなくても早めに受診したいケース
- 動物病院ではどんな検査をする?
- 耳血腫はどう治療する?
- 手術をすれば必ず耳の形は元通りになる?
- 自宅でできるのは「悪化させない管理」
- 耳が腫れた時にやってはいけないこと
- 「耳を冷やせば治る?」と考える前に原因を確認する
- 頭を振り続ける時は原因となる耳の病気を治療する
- 子犬の耳が腫れた場合
- シニア犬の片耳だけが腫れた場合
- 受診前に記録しておくと役立つこと
- よくある質問
- まとめ|犬の耳がぷっくり腫れたら耳血腫と「頭を振る原因」の両方を確認する
- 【最新版】私がおすすめする犬用品10選
犬の耳が腫れた時は「どこが腫れているか」を確認する
「耳が腫れた」と言っても、実際に腫れている場所によって考えられる原因が変わります。
無理に耳の奥まで確認する必要はありませんが、犬が痛がらない範囲で外から見える部分を確認してみましょう。
耳たぶ・耳介そのものが厚く膨らんでいる
耳のひらひらした部分全体、または一部が袋のように膨らんでいる場合は、耳血腫をまず考えます。
耳介を左右から見ると、片耳だけ明らかに分厚くなっていることがあります。
耳の穴の周囲が赤く狭くなっている
耳介そのものより、耳の入口から奥の耳道が赤く腫れている場合は外耳炎などが考えられます。
耳垢、悪臭、かゆみ、頭振りを伴うことが多く、慢性化すると耳道の皮膚が厚くなり、入口が狭く見えることがあります。
耳の外側の皮膚だけが赤く腫れている
虫刺され、皮膚炎、接触刺激、傷などでは、耳介の皮膚表面に赤みや小さな腫れが出ることがあります。
耳だけでなく顔まで腫れている
耳の周囲、まぶた、口元、鼻先まで短時間で腫れている場合は、虫刺されや急性アレルギー反応なども考えます。
この場合は耳だけを見るのではなく、呼吸、嘔吐、下痢、元気、意識状態も確認してください。
・犬の顔が腫れる原因とは?目の周り・口元・あごが急に腫れた時の危険サインと受診目安
耳血腫とは?耳が水風船のように膨らむ状態

耳血腫とは、耳介の皮膚と軟骨の間に血液や液体がたまった状態です。
耳介には皮膚と軟骨があり、その周囲を細い血管が走っています。
強く頭を振る、耳を何度もかくなどの動きが繰り返されると、耳介の血管や組織に負担がかかり、皮膚と軟骨の間へ血液がたまることがあります。
大きさは犬によって異なり、耳の一部分だけ小さく膨らむ場合もあれば、耳介の大部分が大きく厚くなる場合もあります。
- 片耳が急に厚くなった
- 耳の内側が大きく膨らんでいる
- 触るとぷよぷよ・ぶよぶよする
- 水風船のような感触がある
- 耳が重そうに垂れている
- 触ると嫌がる・痛がる
- 頭を何度も振る
- 耳を後ろ足でかく
発生して間もない耳血腫は比較的柔らかいことがありますが、時間が経つと血液が固まり、炎症や瘢痕化によって硬く感じる場合もあります。
耳介の中で組織が変化すると、治った後に耳の形が変形することもあります。
耳血腫ができる原因は「頭を振る・耳をかく」ことが多い
犬の耳血腫では、外耳炎などによるかゆみや痛みから激しく頭を振ったり、後ろ足で耳をかいたりすることが大きく関係します。
つまり、耳血腫は突然現れたとしても、その前から耳の中に問題が起きていた可能性があります。
- 外耳炎
- アレルギー性の耳炎
- 耳ダニ
- マラセチアや細菌の増殖
- 草の種など耳道内の異物
- 咬傷などの外傷
このため、耳血腫を診察する時には、膨らんだ耳介だけでなく耳道の中も確認します。
「耳の中が臭かった」「黒い耳垢が増えていた」「最近よく頭を振っていた」といった情報は診断の重要な手掛かりです。
頭を振る症状についてはこちらも参考にしてください。
・犬が頭を振る原因とは?ブルブルを繰り返す時の耳の病気と受診目安
原因① 外耳炎
犬の耳が腫れたり耳血腫になったりする背景として、特に重要なのが外耳炎です。
外耳炎では、耳の入口から鼓膜までの外耳道に炎症が起こります。
- 耳を何度もかく
- 頭を振る
- 耳が赤い
- 耳垢が増える
- 耳から強いにおいがする
- 耳を触ると嫌がる
- 耳道が腫れる
- 痛みがある
外耳炎によるかゆみが強いと、犬が頭を激しく振ることで耳介の血管へ負担がかかり、耳血腫につながる場合があります。
外耳炎は、単純に「耳に細菌が入った病気」とは限りません。
アレルギー、耳ダニ、異物などが最初の原因になり、その結果としてマラセチアや細菌が増えている場合があります。
耳血腫の処置と同時に外耳炎を治療することが、再発を防ぐために重要です。
・犬の外耳炎とは?耳をかく・臭い・頭を振る時の原因と治療を解説
原因② アレルギー
犬では、アトピー性皮膚炎や食物反応などのアレルギーによって、耳道の皮膚に炎症やかゆみが起こることがあります。
耳を何度もかく、頭を振る状態が続けば、耳血腫を起こすきっかけになる可能性があります。
特に次のような犬では、耳だけでなく皮膚全体の状態も確認します。
- 両耳の外耳炎を繰り返す
- 季節によって耳が悪化する
- 足先をよくなめる
- 顔をこする
- わきやお腹が赤い
- 以前から皮膚のかゆみがある
耳血腫だけ治療してもアレルギー性の炎症が残っていると、再び耳を強くかく可能性があります。
原因③ 耳ダニ
耳ダニは耳道に寄生する小さなダニで、非常に強いかゆみを起こすことがあります。
特に子犬や、ほかの犬・猫との接触歴がある犬では注意します。
- 黒~こげ茶色の耳垢が多い
- 耳を激しくかく
- 頭を頻繁に振る
- 耳の後ろにかき傷がある
- 同居動物も耳をかゆがる
強いかゆみで耳介へ繰り返し負担がかかると、耳血腫につながることがあります。
黒い耳垢があるだけで耳ダニと決めつけることはできないため、耳鏡や耳垢の顕微鏡検査で確認します。
原因④ 草の種などの異物
散歩中に草むらへ入った直後から、突然片耳だけを気にして激しく頭を振る場合は、耳の中に植物片などが入っている可能性があります。
異物が耳道を刺激すると強い痛みやかゆみが起こり、激しい頭振りにつながります。
家庭でピンセットを奥へ入れて探すのは避けてください。
見えない場所にある異物をさらに奥へ押し込んだり、犬が急に動いて耳道や鼓膜を傷つけたりする危険があります。
原因⑤ 虫刺され・急性アレルギー反応

耳介の皮膚は比較的露出しているため、蚊やそのほかの虫の刺激によって局所的に赤く腫れることがあります。
虫刺されでは小さな部分だけ腫れていることもありますが、アレルギー反応が強い犬では耳だけでなく顔やまぶた、口元まで腫れる場合があります。
特に注意したいのは、腫れと一緒に全身症状が出ている場合です。
- 顔全体が短時間で腫れる
- 呼吸が苦しそう
- 大量のよだれが出る
- 何度も吐く
- 激しい下痢がある
- ぐったりする
- ふらつく
- 倒れる
このような症状では、耳の腫れより全身状態を優先して評価する必要があります。
人間用の抗ヒスタミン薬を自己判断で与えず、すぐ動物病院へ連絡してください。
原因⑥ ケガ・咬傷・出血
ほかの犬に耳を噛まれた、家具へぶつけた、耳を何かへ挟んだなどの外傷でも腫れることがあります。
耳介は血管が多いため、小さな傷でも出血が目立つことがあります。
被毛に隠れた小さな咬み傷から細菌が入ると、数日後に皮下へ膿がたまり腫れてくる場合もあります。
- ケンカの後から腫れた
- 耳に傷やかさぶたがある
- 触ると熱い・強く痛がる
- 膿や血が出る
- 数日かけて腫れが大きくなる
- 元気や食欲が落ちる
膿がたまっているように見えても、家庭でつぶしたり針を刺したりしないでください。
原因⑦ 皮膚炎・接触刺激
耳介の皮膚では、薬剤、外用剤、そのほか皮膚に触れた物によって炎症が起きる場合があります。
耳の内側が赤くなり、小さな発疹や腫れ、かゆみ、痛みが出ることがあります。
新しい耳クリーナーや外用製品を使用した数日後から赤く腫れた場合は、いつから何を使用したかを獣医師へ伝えましょう。
「別の消毒薬を塗れば治る」と自己判断でさまざまな製品を重ねると、刺激が増える可能性があります。
原因⑧ 耳のできもの・腫瘤
耳介や耳道にできものが生じ、腫れて見える場合があります。
良性のものから治療が必要な腫瘍までさまざまで、見た目や触った感覚だけでは判断できません。
特に次のような場合は、単純な耳血腫や外耳炎以外も確認します。
- 片耳だけ長期間腫れている
- 硬いしこりがある
- 治療しても片耳の外耳炎を繰り返す
- 血が混じる
- 耳道の入口が狭くなっている
- シニア犬で初めて症状が出た
必要に応じて細胞診や組織検査などで、腫れている組織の性質を確認します。
耳血腫と外耳炎の腫れはどう違う?
| 特徴 | 耳血腫 | 外耳炎による腫れ |
|---|---|---|
| 主に腫れる場所 | 耳介・耳たぶ | 耳道・耳の入口 |
| 触った感触 | 柔らかい・液体が入ったように感じる場合がある | 赤く厚くなり、触ると痛い場合がある |
| 耳垢 | 原因となる外耳炎があれば増える | 増えることが多い |
| におい | 背景の外耳炎によって出ることがある | 強いにおいを伴うことがある |
| 頭振り | よく見られる | よく見られる |
| 治療 | たまった液体への処置+原因治療 | 外耳炎の原因と二次感染に合わせた治療 |
耳血腫と外耳炎は別の状態ですが、同時に存在しているケースが多くあります。
「耳血腫を治療したから外耳炎も治った」とは限らないため、耳道内の状態も確認することが重要です。
耳血腫は放っておけば自然に治る?
小さな耳血腫では時間とともに液体が吸収されることがあります。
しかし、だからといって自宅で長期間そのままにしてよいとは限りません。
血液や炎症が長く残ると耳介内部に瘢痕が形成され、耳が厚く縮んだように変形することがあります。
また、耳血腫ができた原因である外耳炎やアレルギーが未治療のまま残っている可能性があります。
耳血腫を疑う膨らみを見つけた場合は、犬が元気でも早めに動物病院へ相談しましょう。
耳血腫を自分で針で抜いてはいけない
耳血腫は「中に液体がたまっているなら抜けばよい」と考えやすい状態です。
しかし、家庭で針を刺して血液を抜くのは危険です。
- 細菌を入れて感染させる可能性がある
- 血管を傷つけてさらに出血する可能性がある
- 犬が急に動いて耳を大きく傷つける可能性がある
- 痛みを与える
- 原因が残っているため再び液体がたまる可能性がある
注射針を使って液体を抜く方法自体は、動物病院で治療選択肢のひとつとして行われる場合があります。
ただし、無菌操作や犬の状態評価、再発への対応、原因となる耳疾患の治療を含めて行う医療処置です。
家庭で再現しないでください。
耳を押す・揉む・マッサージするのも避ける
耳が腫れている時に、「血を散らせば引くかもしれない」と揉んだり強く押したりしないでください。
耳血腫では血液や液体が皮膚と軟骨の間にたまっているため、圧迫によって痛みや出血が強くなる可能性があります。
膿瘍や腫瘤だった場合も、強く押すことは適切ではありません。
腫れている耳は必要以上に触らず、犬が自分でかいたり激しく頭を振ったりしていないか確認します。
耳が腫れた時にすぐ受診したい危険サイン

耳血腫そのものは多くの場合、数分単位で命に関わる緊急疾患ではありません。
ただし、耳の腫れと次の症状が一緒にある場合は緊急性が変わります。
- 呼吸が苦しそう
- 顔や喉まで急速に腫れている
- 舌・歯ぐきが青紫色、灰色、白っぽい
- 何度も嘔吐・下痢をする
- ぐったりしている
- 倒れる
- 大量に出血している
- 首を傾けている
- まっすぐ歩けない
- 眼球が左右や上下に揺れている
- 何度も同じ方向へ倒れる
- 耳を触れないほど強く痛がる
特に呼吸異常と急速な顔の腫れが重なっている場合は、重いアレルギー反応を考える状況です。
また、首の傾きやふらつきなどがある場合は、中耳・内耳など耳の奥の異常を確認する必要があります。
・犬が頭を傾ける原因とは?首をかしげたまま戻らない時の病気と受診目安
・犬がふらつく原因とは?まっすぐ歩けない・倒れる時の危険サインと受診目安
救急ではなくても早めに受診したいケース
- 耳介が水風船のように膨らんでいる
- 腫れが徐々に大きくなっている
- 頭を何度も振っている
- 耳を何度もかいている
- 耳が臭い
- 耳垢が大量にある
- 耳の中が赤い
- 触ると嫌がる
- 耳に傷・膿・血がある
- 片耳だけの腫れを繰り返す
- 硬いしこりがある
- 外耳炎を何度も繰り返している
耳血腫は時間が経つほど内部が固まり、耳介が変形する可能性があります。
犬が元気だからと何週間も様子を見ず、数日以内を目安に受診先へ相談してください。
動物病院ではどんな検査をする?
犬の耳が腫れている時は、腫れの形、触った感触、耳道内の状態などを確認しながら原因を調べます。
耳介の触診
耳血腫では、耳介の一部または全体に液体がたまったような腫れがあります。
膨らみの位置、大きさ、硬さ、痛み、皮膚の状態を確認します。
耳鏡検査
耳血腫の原因となる外耳炎、耳ダニ、異物などがないかを調べるため、耳鏡を使って耳道の中を確認します。
耳道が大きく腫れている、犬が強く痛がる場合は、無理に検査せず鎮静などを検討することもあります。
耳垢の細胞診
耳垢を採取し、顕微鏡でマラセチア、細菌、炎症細胞などを確認します。
外耳炎が耳血腫の背景にある場合は、耳血腫だけでなく耳道内の治療も必要です。
必要に応じて腫れの内容を確認する
典型的な耳血腫では見た目や触診から判断できる場合がありますが、腫れの原因がはっきりしない場合には内容物を採取して確認することがあります。
硬い腫瘤などでは細胞診や生検が検討されることもあります。
血液検査
通常の耳血腫だけなら必ず血液検査が必要とは限りませんが、出血が止まりにくい、ほかの場所にも出血があるなどの場合は、血小板や血液凝固に関係する異常を確認することがあります。
耳血腫はどう治療する?

耳血腫の治療方法は、腫れの大きさ、発症からの時間、犬の年齢、痛み、基礎疾患などによって異なります。
主な目的は、たまった血液・液体に対処し、皮膚と軟骨の間にできた空間を減らし、再び液体がたまるのを防ぐことです。
動物病院では、状況に応じて次のような治療方法が検討されます。
- 注射針などで内容物を排出する方法
- ドレーンを設置する方法
- 切開して内容物を取り除き縫合する外科的方法
- 一部のケースで抗炎症治療を組み合わせる方法
どの方法が最適かは犬によって異なります。
単純に液体を抜いただけでは再びたまる場合もあるため、再診が必要になることがあります。
そして、治療で非常に重要なのが耳血腫を起こした原因への治療です。
外耳炎があれば外耳炎を治療し、アレルギーが背景にあればその管理を行い、耳ダニや異物があればそれぞれに対応します。
手術をすれば必ず耳の形は元通りになる?
治療をしても、発症から時間が経っている場合や腫れが大きい場合には、耳介へ多少の厚みや変形が残ることがあります。
耳血腫の中では炎症と治癒反応が進み、瘢痕組織が形成されるためです。
治療の目的は見た目だけではありません。
痛みや不快感を減らし、液体の再貯留を防ぎ、背景の耳疾患を治療することが重要です。
自宅でできるのは「悪化させない管理」
耳が腫れている時、自宅で原因を治療することはできません。
できるのは、悪化させないよう安全に管理し、受診につなげることです。
- 腫れている耳を必要以上に触らない
- 犬が激しく頭を振っていないか確認する
- 耳をかき壊していないか確認する
- 耳垢・におい・赤みを外から確認する
- 症状が始まった時間を記録する
- 左右を比較した写真を撮る
- 外耳炎やアレルギーの治療歴を確認する
写真を撮る場合も、耳を強く引っ張ったり膨らみを押したりしないでください。
耳が腫れた時にやってはいけないこと
- 家庭で針を刺して液体を抜く
- 腫れを強く押す
- 耳を揉む・マッサージする
- 膿のような物をつぶす
- 耳の奥へ綿棒を入れる
- ピンセットで異物を探す
- 人間用の耳薬を使う
- 以前処方された耳薬を自己判断で使う
- アルコールやオキシドールを耳へ入れる
- 人用の鎮痛薬を与える
- アレルギーだと思って人用薬を自己判断で与える
特に、人用の痛み止めには犬で中毒を起こすものがあります。
痛がっていても、家庭にある薬を自己判断で使用しないでください。
「耳を冷やせば治る?」と考える前に原因を確認する
虫刺されや打撲のように見えると冷やしたくなるかもしれませんが、耳の腫れの原因が耳血腫、感染、膿瘍、腫瘤などの場合、冷却だけで原因が解決するわけではありません。
さらに、冷たい物を強く押し当てると犬が嫌がり、耳へ余計な刺激を与えることがあります。
明確な指示を受けていない場合は、家庭でさまざまな処置を試すより、まず受診先へ状態を伝えてください。
頭を振り続ける時は原因となる耳の病気を治療する
耳血腫がある犬では、膨らんだ耳そのものが気になって頭を振ることもあります。
さらに、もともとの外耳炎によるかゆみが残っていれば、処置後も頭を振り続けることがあります。
そのため、「膨らみが小さくなったから治った」と判断せず、耳道の炎症まで治療できているか確認することが重要です。
外耳炎を繰り返している犬では、アレルギーなどの一次原因を探すことも再発予防につながります。
子犬の耳が腫れた場合

子犬では、耳ダニ、外耳炎、虫刺され、ケガなどを確認します。
特に保護されたばかりの犬、多頭飼育環境から迎えた犬、猫と同居している犬などで、黒い耳垢と非常に強いかゆみがある場合は耳ダニも候補になります。
子犬は耳の違和感を我慢せず激しくかくことがあり、その結果として耳介を傷つけたり耳血腫を起こしたりする可能性があります。
「元気いっぱいだから大丈夫」と考えず、腫れがはっきりしている場合は早めに診察を受けてください。
シニア犬の片耳だけが腫れた場合
シニア犬でも耳血腫や外耳炎は起こりますが、これまで耳の病気がなかった犬に片側だけの腫れが続く場合は、腫瘤なども確認します。
- 片耳だけ何週間も腫れている
- 硬いしこりがある
- 血が出る
- 耳道が狭くなっている
- 片耳の外耳炎だけ繰り返す
- 耳薬を使っても改善しない
高齢だから耳の形が変わっただけと判断せず、耳道の奥まで確認してもらいましょう。
受診前に記録しておくと役立つこと
耳血腫や耳の腫れは、いつ・どのように始まったかが診断の手掛かりになります。
- いつ腫れに気づいたか
- 急に大きくなったか
- 片耳か両耳か
- 柔らかいか硬いか
- 触ると痛がるか
- 最近よく頭を振っていたか
- 耳をかいていたか
- 耳垢が増えていたか
- 耳が臭っていたか
- 草むらへ入ったか
- ほかの犬とケンカしたか
- 新しい耳薬やケア用品を使ったか
- 皮膚のかゆみもあるか
- 過去に外耳炎を繰り返しているか
昨日と今日の耳の大きさが比較できる写真があれば、腫れが拡大しているか伝えやすくなります。
よくある質問
Q. 犬の耳が突然ぷっくり膨らみました。耳血腫ですか?
耳介が突然厚くなり、柔らかく液体が入ったように感じる場合は耳血腫を疑います。ただし、膿瘍や腫瘤など別の原因もあるため、見た目だけで確定せず動物病院で確認してください。
Q. 耳血腫は痛いですか?
耳が張って不快感や痛みが出る犬がいます。また、耳血腫の背景に外耳炎がある場合は、外耳炎そのものによる強い痛みやかゆみを伴うことがあります。
Q. 耳血腫は自然に吸収されますか?
時間とともに液体が吸収されるケースもありますが、耳介が瘢痕化して厚く変形する可能性があります。また、外耳炎など原因となった病気が残っている場合があります。自己判断で放置せず受診してください。
Q. 家で針を刺して血を抜いてもいいですか?
行わないでください。感染、出血、痛み、耳介の損傷を起こす危険があります。内容物を抜く処置は、必要に応じて動物病院で行います。
Q. 耳血腫になったのは外耳炎のせいですか?
外耳炎は犬の耳血腫でよく確認される背景のひとつです。かゆみや痛みから激しく頭を振ったり耳をかいたりすることで耳介へ負担がかかります。ただし、アレルギー、耳ダニ、異物、外傷などほかの原因もあります。
Q. 耳の穴の周りだけ赤く腫れています
耳介ではなく耳道が腫れている場合は、外耳炎などを考えます。耳垢、におい、頭振り、痛みがある場合は自宅で奥まで掃除せず受診してください。
Q. 虫に刺されたように耳だけ腫れています
局所的な虫刺されで耳介が赤く腫れることはあります。ただし、顔や口元まで急速に腫れる、嘔吐、呼吸異常、ぐったりなどが加わった場合は重いアレルギー反応の可能性があるため緊急受診してください。
Q. 耳が腫れていて頭をずっと振っています
耳血腫だけでなく、外耳炎、耳ダニ、異物など強い違和感の原因が残っている可能性があります。頭振りを放置すると耳介への負担がさらに増えるため、早めに診察を受けてください。
Q. 耳が腫れて首まで傾いています
首の傾きやふらつきがある場合は、単純な耳血腫だけではなく中耳・内耳など耳の奥の異常も確認する必要があります。家庭で耳掃除をせず、早めに受診してください。
Q. 耳血腫は手術しなければ治りませんか?
すべての耳血腫で同じ治療を行うわけではありません。大きさや発症期間などに応じて、外科的治療、排液、ドレーン、抗炎症治療などが検討されます。愛犬に適した方法は診察した獣医師と相談してください。
Q. 一度耳血腫になったら再発しますか?
再発するケースはあります。特に外耳炎やアレルギーなど、頭振り・耳かきの原因が残っている場合は再び耳介へ負担がかかります。耳血腫だけでなく背景疾患を管理することが重要です。
まとめ|犬の耳がぷっくり腫れたら耳血腫と「頭を振る原因」の両方を確認する

犬の耳が突然腫れる原因には、耳血腫、外耳炎、アレルギー、耳ダニ、異物、虫刺され、ケガ、膿瘍、腫瘤などがあります。
特に、耳介が厚くなり、ぷよぷよ・ぶよぶよして水風船のように感じる場合は耳血腫を疑います。
耳血腫は耳介の皮膚と軟骨の間に血液や液体がたまった状態で、外耳炎などによるかゆみから犬が激しく頭を振ったり耳をかいたりすることが発症に関係します。
そのため、膨らんだ部分への処置だけでなく、「なぜ犬が頭を振ったのか」「なぜ耳をかいていたのか」を調べることが重要です。
動物病院では、耳介の状態だけでなく耳鏡で耳道を確認し、必要に応じて耳垢の細胞診などを行います。耳血腫の治療には、排液、ドレーン、外科的処置、抗炎症治療などがあり、腫れの大きさや犬の状態によって方法を選択します。
家庭では、膨らんだ耳へ針を刺す、強く揉む、押す、ピンセットを耳の奥へ入れる、人間用の耳薬や鎮痛薬を使うといった対応は避けてください。
また、耳血腫はすぐ命に関わることが多い状態ではありませんが、長期間放置すると耳が厚く変形する可能性があります。犬が元気でも、明らかな膨らみがあれば早めに動物病院へ相談しましょう。
顔や喉まで急速に腫れる、呼吸が苦しい、何度も吐く、倒れる、首を傾ける、ふらつく、大量に出血する場合は緊急性があります。耳だけの問題と思わず、すぐ受診先へ連絡してください。
耳の腫れを見つけた時は、腫れの大きさだけでなく、耳垢、におい、頭振り、耳をかく行動、痛み、皮膚症状まで一緒に確認することが、原因を見つける大切な手掛かりになります。


