
散歩中、愛犬が突然力を失ったように倒れた。
興奮して走った直後、急に足から崩れるように倒れ、数秒すると何事もなかったように立ち上がった。
咳き込んだ後に一瞬意識を失ったように見えた。
このような場面を見ると、「てんかん?」「心臓発作?」「もう普通に戻ったから大丈夫?」と心配になりますよね。
犬が突然意識を失って倒れ、短時間で自然に回復する状態を失神(シンコープ)と呼びます。
失神は、脳へ届く血液や酸素が一時的に不足することで起こります。
代表的な原因として、心臓のリズムが異常になる不整脈、心臓病、肺高血圧症、重い呼吸器疾患などがあります。
また、低血糖、重度の貧血や出血、血圧低下、アジソン病など全身の異常によって、失神や失神に似た虚脱が起こることもあります。
特に覚えておきたいのは、失神した犬が数十秒~数分で普通に戻ったとしても、「治った」とは限らないことです。
不整脈のように、症状が出ていない時間には普段通り元気に見える病気もあります。
そのため、一度だけで自然に回復した場合でも、初めて突然倒れたのであれば動物病院へ連絡し、原因を確認することが大切です。
倒れたまま意識が戻らない、呼吸が苦しい、舌や歯ぐきが青紫色・白色、何度も短時間に倒れる、強い出血がある、けいれんが長く続く場合は緊急です。
また、犬が倒れる原因は失神だけではありません。
てんかん発作、前庭疾患、低血糖、中毒、ショック、強い脱力、足腰や神経の異常などでも「突然倒れた」ように見えることがあります。
この記事では、犬の失神とはどのような状態なのか、てんかん発作との違い、考えられる原因、緊急受診の目安、倒れた時の対応、動物病院で行われる検査まで詳しく解説します。

- 犬の失神(シンコープ)とは?
- 「倒れる」と「失神」は同じではない
- 犬の失神とてんかん発作の違い
- 原因① 不整脈
- 原因② 心臓病
- 原因③ 肺高血圧症
- 原因④ 咳の後に起こる失神
- 原因⑤ 気管虚脱・重い気道の異常
- 原因⑥ 低血糖
- 原因⑦ 貧血・内出血・ショック
- 原因⑧ アジソン病・電解質異常
- 原因⑨ 薬の影響・中毒
- 失神ではなく「ふらついて倒れた」可能性もある
- 散歩・運動の後に倒れる場合
- 咳をした後に倒れる場合
- 寝ている時・安静時に突然倒れる場合
- 数秒で元気に戻ったら様子見でいい?
- すぐに動物病院へ連絡したい危険サイン
- 犬が倒れた瞬間に飼い主さんがすること
- 犬が倒れた時にやってはいけないこと
- 受診時に伝えたい「倒れる前・最中・後」の様子
- 動物病院ではどんな検査をする?
- 犬の失神はどう治療する?
- 原因が分かるまで散歩はどうする?
- 子犬が突然倒れた場合
- シニア犬が突然倒れた場合
- 一度だけの失神でも記録を残す
- よくある質問
- まとめ|犬が突然倒れてすぐ戻っても失神の原因を確認する
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犬の失神(シンコープ)とは?
失神とは、脳への血流や酸素供給が一時的に不足し、短時間だけ意識を失う状態です。
典型的な失神では、犬が突然力を失い、体の筋肉がゆるんだように倒れます。
その後、脳への血流が回復すると、数秒~数分程度で意識が戻ることがあります。
倒れる直前に少しふらつく犬もいますが、はっきりした前触れなく突然倒れる犬もいます。
- 突然足の力が抜ける
- 横へ倒れる
- 一時的に呼びかけへの反応がなくなる
- 体がぐったりする
- 数秒~数分で意識が戻る
- 回復後は比較的早く普段の様子へ戻る
- 運動や興奮の後に起こることがある
- 咳き込んだ直後に起こることがある
ただし、すべての失神がこの通りに起こるわけではありません。
失神中に足が少し動いたり、尿や便が出たりすることもあるため、「手足が動いたから絶対てんかん」と判断することもできません。
「倒れる」と「失神」は同じではない
飼い主さんが「倒れた」と表現する状態には、いくつもの種類があります。
失神は、その中でも一時的に意識を失う状態です。
一方、意識はあるものの足へ力が入らずしゃがみ込む、バランスを崩して転ぶ、痛みで立てなくなる場合などは、厳密には失神ではありません。
| 見え方 | 考え方 |
|---|---|
| 突然ぐったりして意識を失い、短時間で戻る | 失神を疑う |
| 意識はあるが足へ力が入らない | 脱力・低血糖・循環異常など |
| 頭が傾き、ふらついて倒れる | 前庭・神経系の異常など |
| 体が硬直し、激しく手足を動かす | 発作を疑う |
| 突然痛がり、足を使えず倒れる | 整形外科・脊髄疾患など |
実際には外見だけで区別しにくいケースがあります。
「失神だったかどうか」を家庭で確定する必要はありません。
何が起きたかをできるだけ正確に記録し、獣医師へ伝えることが重要です。
犬の失神とてんかん発作の違い

失神と特に間違えやすいのが、てんかんを含むけいれん発作です。
どちらも突然倒れ、呼びかけへの反応がなくなることがあるため、実際に見ただけで完全に区別できないことがあります。
一般的には次の違いが判断材料になります。
| 特徴 | 失神で多い傾向 | 発作で多い傾向 |
|---|---|---|
| きっかけ | 運動、興奮、咳など | 明確なきっかけがない場合も多い |
| 倒れ方 | 急に力が抜ける | 硬直・激しい手足の動きなど |
| 時間 | 比較的短いことが多い | 1~数分程度続く場合がある |
| 回復 | 比較的速い | 発作後に混乱・落ち着かなさが残ることがある |
| よだれ・口の動き | 目立たないことが多い | 大量のよだれや顎の動きが出る場合がある |
ただし、この表だけで診断することはできません。
失神でも短い手足の動きや失禁が起こる場合がありますし、発作にも多くの種類があります。
倒れた直前から回復後までを動画に残せると、失神と発作を区別する大きな手掛かりになります。
ただし、撮影するために犬の安全確保や受診を遅らせないでください。
てんかんについてはこちらで詳しく解説しています。
・犬のてんかんとは?けいれん発作・意識がない時に注意したい病気を解説
原因① 不整脈
犬の失神で特に重要な原因が、心臓のリズムが異常になる不整脈です。
心臓は一定のリズムで収縮し、脳や全身へ血液を送っています。
心拍が極端に遅くなる、速くなりすぎる、正常なリズムが大きく乱れるなどすると、一時的に心臓から送り出される血液量が減り、脳への血流が不足することがあります。
すると突然意識を失い、倒れることがあります。
- 散歩中に突然倒れる
- 走った後に倒れる
- 興奮すると失神する
- 数秒で立ち上がる
- 普段は元気に見える
- 倒れる回数が増えている
不整脈は症状が出ている瞬間にだけ起こることもあります。
そのため、動物病院へ着いた時には心拍が普通に戻り、短時間の心電図では異常を捉えられないケースがあります。
このような場合、24時間以上心電図を記録するホルター心電図などが検討されます。
原因② 心臓病
心臓の弁、心筋、先天的な構造などに異常がある犬でも、全身へ十分な血液を送れなくなり、失神することがあります。
心臓病では失神だけでなく、次の症状が一緒に見られることがあります。
- 咳が続く
- 以前より散歩ですぐ疲れる
- 運動を嫌がる
- 安静時の呼吸が速い
- 呼吸が苦しそう
- お腹が膨らむ
- 体重が減る
- 舌や歯ぐきの色が悪い
特に「運動・興奮すると倒れる」という経過では、心臓や循環の異常を確認することが重要です。
・犬の心臓病とは?咳・呼吸が苦しそう・疲れやすい時に注意したい病気を解説
原因③ 肺高血圧症

肺高血圧症は、肺の血管内の圧力が異常に高くなる状態です。
犬では、心臓病、重い肺や気道の病気、肺血栓塞栓症、フィラリア症など、さまざまな病気に伴って起こることがあります。
重度になると、運動した時に心臓から十分な血液を送り出せなくなり、失神することがあります。
- 運動すると倒れる
- 散歩ですぐ疲れる
- 呼吸が速い
- 呼吸が苦しそう
- 歯ぐきや舌が青紫色になる
- お腹に水がたまる
肺高血圧症は見た目だけで診断できません。
心臓超音波検査などを使って、肺動脈圧が高くなっている可能性を評価します。
原因④ 咳の後に起こる失神
強く咳き込んだ直後に犬が倒れる場合があります。
激しい咳によって胸の中の圧力が変化し、一時的に心臓へ戻る血液量や脳への血流が低下することなどが関係します。
咳に関連する失神は、気道疾患や心肺疾患がある犬で起こることがあります。
特に、何度も咳き込んだ後に力が抜けるように倒れる場合は、「咳をした勢いで転んだだけ」と考えないでください。
咳の原因そのものを調べる必要があります。
・犬の咳が続く原因とは?カハッ・ガーガーする時の危険サインと受診目安
原因⑤ 気管虚脱・重い気道の異常
呼吸器や気道の異常によって十分な酸素を取り込めなくなると、重症時には倒れることがあります。
小型犬で注意したい気管虚脱では、ガーガーという咳、興奮時の呼吸異常などが見られ、重症になるとチアノーゼや失神を起こすことがあります。
また、短頭種気道症候群、喉頭の病気、重度の肺疾患などでも酸素不足による虚脱が起こる可能性があります。
「咳+倒れる」「呼吸が苦しい+倒れる」という組み合わせは軽視しないでください。
・犬の気管虚脱とは?ガーガー咳・呼吸困難の症状と治療、受診目安を解説
原因⑥ 低血糖
脳は正常に働くためにブドウ糖を必要とします。
血糖値が大きく低下すると、脱力、震え、ふらつき、意識低下、けいれん、虚脱などが起こることがあります。
特に注意したいのは、非常に小さな子犬、重い病気がある犬、糖尿病でインスリン治療を受けている犬などです。
また、アジソン病、肝臓の重い病気、一部の腫瘍、中毒などが低血糖へ関係することもあります。
意識が弱い犬へ砂糖水、はちみつ、食べ物などを無理に口へ入れないでください。
飲み込む力が落ちている場合は誤嚥する危険があります。
原因⑦ 貧血・内出血・ショック
血液が脳へ運ぶ酸素が不足したり、血圧が大きく低下したりすると、犬が倒れることがあります。
大量出血は体の外から見えるとは限りません。
交通事故や腹部の腫瘤からの出血などでは、お腹の中で出血していることがあります。
- 歯ぐきが白い
- 舌の色が薄い
- ぐったりしている
- 呼吸が速い
- 足先が冷たい
- お腹が急に膨らむ
- 黒い便が出る
- 血を吐く
- 倒れる
失神や虚脱に歯ぐきの白さが重なる場合は緊急性があります。
・犬の歯ぐきが白い原因とは?貧血・内出血の危険サインと受診目安を解説
原因⑧ アジソン病・電解質異常
副腎皮質ホルモンが不足するアジソン病では、元気低下、食欲不振、嘔吐、下痢、震えなどの症状が良くなったり悪くなったりすることがあります。
重症化してアジソンクリーゼになると、血圧低下、脱水、電解質異常などによって強い脱力や虚脱、意識低下を起こすことがあります。
「以前から胃腸症状を繰り返していた犬が突然立てなくなった」という場合には、こうした全身疾患も確認します。
・犬のアジソン病とは?嘔吐・下痢・ぐったりする症状とアジソンクリーゼを解説
原因⑨ 薬の影響・中毒
血圧や心拍へ影響する薬によって、血圧が下がりすぎたり心拍数が変化したりすると、失神につながる場合があります。
ただし、処方薬を飲んでいる犬が倒れたからといって、飼い主さんの判断で薬を突然中止してはいけません。
薬の種類、最後に飲んだ時間、用量を確認し、処方した動物病院へ連絡してください。
また、人用医薬品、殺虫剤、農薬、植物、食品などの中毒でも、ふらつき、けいれん、意識低下、虚脱が起こることがあります。
誤食した可能性がある場合は、自宅で吐かせようとせず、商品名や成分、食べた可能性のある量を確認して受診先へ伝えます。
失神ではなく「ふらついて倒れた」可能性もある
犬が倒れたように見えても、最後まで意識が保たれていたのであれば、バランス障害や神経・足腰の問題かもしれません。
- 頭が左右どちらかへ傾いている
- 眼球が左右や上下に揺れる
- 同じ方向へ倒れる
- まっすぐ歩けない
- 後ろ足がもつれる
- 意識はあり飼い主さんを見ている
このような症状では、前庭疾患や脳・脊髄の異常などを含めて調べます。
・犬がふらつく原因とは?まっすぐ歩けない・倒れる時の危険サインと受診目安
散歩・運動の後に倒れる場合

失神の原因を考えるうえで、「いつ倒れたか」は非常に重要です。
運動中や興奮時には、普段より多くの血液や酸素を全身へ送る必要があります。
心臓や肺、気道に問題がある犬では、この負荷へ対応できず失神することがあります。
- 走り始めると倒れる
- 散歩後半で突然倒れる
- ボール遊び中に倒れる
- 来客で興奮した時に倒れる
- 吠え続けた後に倒れる
- 暑い日の運動中に倒れる
このような場合は、再現させるために再び走らせたり興奮させたりしないでください。
原因が分かるまでは激しい運動を控え、獣医師へ倒れた状況を伝えましょう。
咳をした後に倒れる場合
「ガーガー」「カハッ」と何度も咳をした直後に一瞬倒れる場合も、受診が必要です。
咳の後の失神では、気管虚脱などの気道疾患だけでなく、心臓病や肺高血圧症などが背景に存在していることがあります。
咳そのものも診断の手掛かりになるため、可能なら普段の咳の音を動画に残しておきましょう。
ただし、呼吸が苦しそうな状態で動画撮影のために待たないでください。
寝ている時・安静時に突然倒れる場合
失神は運動時だけに起こるわけではありません。
不整脈の種類によっては、安静時や睡眠から起きた時などに失神することがあります。
「運動していないから心臓ではない」とは判断できません。
特に突然立ち上がった直後や、短時間に何度も同じ症状を繰り返す場合は、発生時刻と状況を記録して受診してください。
数秒で元気に戻ったら様子見でいい?
失神では、短時間で自然に意識が戻ること自体は珍しくありません。
そのため、動物病院へ連れて行こうと思った頃には、犬が普通に歩き、ごはんを欲しがっていることもあります。
しかし、早く回復したことと原因が軽いことは同じではありません。
不整脈や心臓病などでは、発作と発作の間は症状がほとんどないことがあります。
特に初めて失神した犬、シニア犬、心雑音を指摘されたことがある犬、咳や運動不耐がある犬では、一度の失神でも診察を受けましょう。
すぐに動物病院へ連絡したい危険サイン
犬が突然倒れた時、次のような症状があれば緊急受診を優先してください。
- 倒れたまま意識が戻らない
- 呼びかけへの反応が非常に弱い
- 呼吸していないように見える
- 呼吸が極端に苦しそう
- 胸やお腹を大きく使って呼吸している
- 舌・歯ぐきが青紫色、灰色
- 歯ぐきが真っ白に近い
- 短時間に何度も倒れる
- けいれんが長く続いている
- 倒れた後も立てない
- 大量に出血している
- お腹が急に膨れている
- 交通事故や転落の後に倒れた
- 毒物・薬を誤食した可能性がある
- 体が非常に熱い
呼吸異常がある場合はこちらも確認してください。
・犬の呼吸が荒い原因とは?安静時もハァハァする時の危険サインと受診目安
犬が倒れた瞬間に飼い主さんがすること

突然倒れると慌てて抱き上げたくなりますが、まず犬自身と周囲の安全を確保します。
① 階段・道路・水辺などの危険から守る
犬が道路や階段など危険な場所で倒れた場合は、自分自身の安全にも注意しながら、安全な場所へ移動させます。
ただし、事故や転落後で脊椎や骨折が疑われる場合は、必要以上に体を曲げたり歩かせたりしないでください。
② 呼吸と反応を見る
胸が動いているか、呼びかけに反応するかを確認します。
呼吸が確認できない、意識が戻らない場合はすぐ救急動物病院へ連絡してください。
心肺蘇生が必要な状態では、電話で獣医療スタッフの指示を受けながら対応します。
③ 発症時間を確認する
失神や発作では、「何秒・何分続いたか」が非常に重要です。
突然のことで正確な時間は分からなくなりやすいため、可能ならスマートフォンの時計やタイマーを確認します。
④ 安全なら動画を撮る
家族が複数いる場合など、安全確保や病院への連絡を妨げない状況なら動画を撮影します。
倒れ方、手足の動き、呼吸、回復後の様子は、失神と発作の区別に役立ちます。
ただし、一人しかいない場合や犬の状態が悪い場合は、撮影より安全確保と受診を優先してください。
⑤ 回復しても急に運動させない
立ち上がった直後に「本当に治ったか確認しよう」と歩かせたり走らせたりしないでください。
心臓や循環が原因の場合、再び負荷をかけると失神を繰り返す可能性があります。
犬が倒れた時にやってはいけないこと
- 無理に立たせて歩かせる
- 原因確認のため走らせる
- 口の中へ手を入れる
- けいれんしている犬の舌を引っ張る
- 意識が弱い犬へ水を飲ませる
- 意識が弱い犬へフードや砂糖水を流し込む
- 人間用の心臓薬や鎮静薬を与える
- 以前別の症状で処方された薬を使う
- 「すぐ戻ったから」と何週間も放置する
- 再発を確認するため興奮させる
特に発作の可能性がある場合、犬の口へ指や物を入れないでください。
意識が低下している犬へ飲食物を無理に与えることも誤嚥につながる可能性があります。
受診時に伝えたい「倒れる前・最中・後」の様子
失神や発作は、動物病院へ到着する頃には症状が消えていることがあります。
そのため飼い主さんが見た状況が非常に重要です。
倒れる前
- 散歩・走る・遊ぶなど運動していたか
- 来客などで興奮していたか
- 咳をしていたか
- 排便や排尿中だったか
- 食事前後だったか
- 薬を飲んだ後だったか
- ふらつきや震えがあったか
倒れている最中
- 体がぐったりしていたか
- 体が硬直していたか
- 手足を激しく動かしたか
- 目が開いていたか
- 呼びかけへ反応したか
- 尿や便が出たか
- よだれが多かったか
- 何秒・何分続いたか
回復した後
- すぐ普通に歩けたか
- しばらくぼんやりしたか
- 落ち着かず歩き回ったか
- 食欲が戻ったか
- 呼吸が速いままか
- 再び倒れなかったか
こうした情報をメモしておくと、診断の手掛かりになります。
動物病院ではどんな検査をする?
犬が失神した場合は、「本当に失神なのか」と「なぜ脳への血流・酸素が一時的に不足したのか」を調べます。
身体検査・聴診
心拍数、心拍のリズム、心雑音、呼吸音、脈、粘膜の色などを確認します。
失神が起きていない時には正常に見えることもあるため、身体検査が正常でも原因が完全に否定できるわけではありません。
血液検査
貧血、血糖値、電解質、肝臓や腎臓などの全身状態を確認します。
低血糖、重度の貧血、電解質異常などが失神・虚脱へ関係していないかを調べます。
血圧測定
血圧が適切に維持できているか確認します。
薬を使用中の犬では、血圧を下げる治療が影響していないか評価することもあります。
心電図(ECG)

心電図では、心臓の電気的な活動を記録し、不整脈がないか確認します。
ただし、数分間の検査中に不整脈が出なければ、異常を捉えられない場合があります。
ホルター心電図
失神を繰り返しているのに通常の心電図では異常が見つからない場合、24時間以上連続で心電図を記録するホルター心電図が使用されることがあります。
日常生活、睡眠、散歩などの中で一時的な不整脈が起こっていないか調べられるのが特徴です。
心臓超音波検査
心臓の大きさ、弁、心筋、血流などを確認します。
心臓病や肺高血圧症が失神へ関係していないか評価するために重要です。
胸部レントゲン検査
心臓の大きさ、肺、気管、肺血管などを確認します。
咳や呼吸異常を伴う犬では特に重要な検査のひとつです。
神経学的検査
失神ではなくてんかん発作や神経疾患が疑われる場合は、神経学的検査を行います。
必要に応じてMRIなど、さらに詳しい検査へ進むことがあります。
犬の失神はどう治療する?
「失神そのもの」にひとつの治療法があるわけではありません。
原因となっている病気を特定し、それに合わせて治療します。
- 不整脈への治療
- 心臓病への治療
- 一部の重い徐脈性不整脈ではペースメーカーを検討
- 肺高血圧症や呼吸器疾患への治療
- 低血糖の原因治療
- 貧血・出血への治療
- 電解質異常への治療
- 原因薬剤の見直し
心臓病が原因の場合でも、病気の種類や進行度によって治療は異なります。
家族や知人の犬が飲んでいる心臓薬を自己判断で使わないでください。
原因が分かるまで散歩はどうする?
運動中に失神した犬では、原因が分かるまで激しい運動や強い興奮を避けます。
ただし、すべての犬を完全にケージへ閉じ込める必要があるわけではありません。
どの程度の運動を許可できるかは原因によって異なるため、受診先へ確認してください。
散歩へ出る場合でも、長時間走らせる、ボールを追わせ続ける、高温環境で運動させるなどは避けましょう。
子犬が突然倒れた場合
子犬では、低血糖、先天性心疾患、中毒、感染症など成犬とは異なる原因も重要です。
特に体の小さな子犬では、食事が十分取れていない状態や体調不良によって血糖値が下がることがあります。
子犬が突然ぐったりして倒れた場合は、「疲れて寝た」と考えず反応を確認してください。
意識が弱い、震える、けいれんする、食事を食べない場合は早めに動物病院へ連絡します。
意識が悪い子犬へ食事や糖分を無理に口へ流し込まないでください。
シニア犬が突然倒れた場合
シニア犬では、心臓病、不整脈、肺疾患、貧血、腹腔内出血、腫瘍、内分泌疾患など、さまざまな原因を考える必要があります。
「高齢だから足腰が弱って倒れただけ」と決めつけることは危険です。
特に、今まで普通に歩いていた犬が突然意識を失った場合や、散歩中に何度も倒れるようになった場合は受診してください。
歯ぐきの色、呼吸、咳、食欲、体重、お腹の張りなど、ほかの変化がないかも確認します。
一度だけの失神でも記録を残す
失神は次の診察まで二度と起こらないこともあれば、数日後に再発することもあります。
一度しか起きなかったとしても、次の情報を残しておきましょう。
- 発生日と時間
- 直前に何をしていたか
- 咳をしていたか
- 何秒くらい倒れていたか
- 体が硬かったか、力が抜けていたか
- 手足が動いたか
- 尿や便が出たか
- 意識が戻るまでの時間
- 回復後すぐ普通になったか
- その後の食欲と呼吸
再発した場合には、前回との違いも重要な情報になります。
よくある質問
Q. 犬が一瞬倒れましたが、すぐ普通に戻りました。大丈夫ですか?
すぐ回復するのは失神でよく見られる経過ですが、原因が軽いとは限りません。不整脈など重い心臓の問題でも短時間で元気に戻ることがあります。初めての失神でも動物病院へ相談してください。
Q. 犬の失神は何秒くらい続きますか?
典型的な失神は短時間で、数秒~数分以内に回復することが多いとされています。ただし、時間だけで失神か発作かを確定することはできません。長く意識が戻らない場合は緊急です。
Q. 散歩中に走ったら突然倒れました
運動時の失神では、不整脈、心臓病、肺高血圧症など心肺系の問題を確認する必要があります。再発させるために再び走らせず、受診してください。
Q. 咳をした直後に倒れます
激しい咳に関連する失神が考えられますが、その背景には気管虚脱、心臓病、肺高血圧症などが存在する場合があります。咳の原因を含めた検査が必要です。
Q. 失神とてんかんはどう見分けますか?
失神は運動・興奮・咳などに関連し、急に力が抜け、比較的短時間で回復する傾向があります。発作では硬直、激しい手足の動き、大量のよだれ、発作後の混乱などが見られることがあります。ただし重なる症状もあるため、動画と検査を使って獣医師が判断します。
Q. 失神中におしっこをしました。てんかんですか?
失禁だけでは区別できません。失神でも尿や便が出る場合があります。倒れる直前の状況、体の動き、持続時間、回復後の状態を合わせて判断します。
Q. 心電図が正常だったので心臓が原因ではありませんか?
短時間の心電図で異常が見つからなくても、一時的にしか出ない不整脈は否定できません。必要に応じて24時間以上記録するホルター心電図や心臓超音波検査などが検討されます。
Q. 犬が倒れた時に水を飲ませてもいいですか?
意識が十分戻っていない犬へ水や食事を無理に与えないでください。誤嚥する危険があります。まず呼吸と意識状態を確認し、受診先へ連絡してください。
Q. シニア犬なので老化で倒れただけでしょうか?
老化だけで突然意識を失うことを説明することはできません。シニア犬では心臓病、不整脈、貧血、内出血、腫瘍なども増えるため、初めて倒れた場合でも検査を受けてください。
Q. 失神を繰り返していますが、毎回すぐ戻ります
繰り返す失神は原因の特定が特に重要です。一時的な不整脈などでは普段の診察時に異常が出ない場合もあるため、発症時間を記録し、ホルター心電図などが必要か獣医師へ相談してください。
まとめ|犬が突然倒れてすぐ戻っても失神の原因を確認する

犬の失神(シンコープ)は、脳への血液や酸素の供給が一時的に不足し、突然意識を失って倒れる状態です。
典型的には突然力が抜けるように倒れ、数秒~数分で自然に意識が戻ることがあります。
しかし、短時間で普段通りに戻ったからといって原因まで解決したわけではありません。
犬の失神では、不整脈や心臓病をはじめ、肺高血圧症、重い気道疾患、咳に関連した血圧変化、低血糖、貧血、内出血、アジソン病、薬剤の影響など、さまざまな原因を確認する必要があります。
また、突然倒れる症状はてんかん発作や前庭・神経疾患でも起こるため、倒れ方だけから家庭で病名を決めることはできません。
発生した時は、犬の安全を確保し、呼吸と意識状態を確認します。
安全にできる場合は、倒れる直前から回復後までの時間や、運動・咳・興奮などのきっかけ、手足の動き、回復までの時間を記録してください。
動物病院では血液検査、血圧、心電図、心臓超音波、胸部レントゲンなどを組み合わせて原因を調べ、短時間の心電図で不整脈を確認できない場合にはホルター心電図を使うこともあります。
意識が戻らない、呼吸が苦しい、歯ぐきや舌が青紫色・白色、短時間に何度も倒れる、出血や強いけいれんを伴う場合は緊急です。すぐ動物病院へ連絡してください。
そして、数秒で元気に戻った失神でも、特に初めて起きた場合や繰り返している場合は、「もう普通だから大丈夫」と放置せず原因を確認してもらいましょう。


