
狆(ちん)は、白地に黒または赤の斑が入った美しい被毛、大きな丸い目、短い鼻、豊かな飾り毛が特徴的な日本原産の小型犬です。
古くから宮廷や上流社会で愛玩されてきた歴史があり、優雅な外見と穏やかな性格を持つ日本ゆかりの犬種として知られています。
ジャパンケネルクラブ(JKC)では、狆の用途を「家庭犬」とし、性格について「利口でおとなしく、愛らしい性質」としています。
体が小さく、激しい運動を大量に必要とする犬種ではないため、マンションなどの室内飼育にも比較的適応しやすい犬種です。
家族との距離が近く、そばで静かに過ごしたり、遊びや短いトレーニングを楽しんだりする犬も多くいます。
一方で、狆を「小さくておとなしいから飼育が簡単」とだけ考えるのはおすすめできません。
狆は鼻の短い短頭犬種であり、犬によっては短頭種気道症候群(BOAS)による呼吸のしづらさが問題になる場合があります。
暑さや湿度への注意が必要で、大きないびきやガーガーする呼吸音、運動するとすぐ苦しくなる状態を「狆だから普通」と決めつけないことが大切です。
また、大きく前方へ出た目では、白内障、眼瞼内反、異常なまつ毛による刺激、角膜の傷など眼科トラブルにも注意します。
膝蓋骨脱臼、心臓病なども健康管理で確認したい問題で、繁殖犬については海外のナショナルブリードクラブで膝蓋骨、心臓、眼科の健康検査が推奨されています。
さらに、狆ではGM2ガングリオシドーシスという遺伝性の神経疾患も知られているため、子犬を迎える際には親犬や血統の健康情報を確認することも重要です。
狆との暮らしでは、かわいらしい短い鼻や大きな目を犬種の魅力として楽しむだけでなく、呼吸しやすく、目に痛みがなく、健康に歩ける状態を日常的に確認することが大切です。
この記事では、狆の性格、飼いやすさ、大きさ、寿命、運動量、抜け毛、留守番、しつけ、注意したい病気、食事、子犬期・シニア期まで詳しく解説します。

1. 狆の基本情報
| 犬種名 | 狆(ちん) |
|---|---|
| 英名 | Chin/Japanese Chin |
| 原産国 | 日本 |
| 用途(JKC) | 家庭犬 |
| サイズ分類 | 小型犬 |
| 体高 | 牡25cm前後、牝は牡よりやや小さい |
| 体重 | 約2~5kg程度がひとつの目安。個体差あり |
| 平均寿命 | 10~12年程度がひとつの目安 |
| 運動量 | 少なめ~中程度。毎日の軽い散歩と室内遊び |
| 被毛 | 長く豊かな被毛。耳・尾・四肢などに飾り毛がある |
| 毛色 | 白地に黒または赤の斑 |
| 抜け毛 | ある。定期的なブラッシングが必要 |
| トリミング | 全身を短くカットする定期トリミングは基本的に不要 |
| 留守番 | 個体差あり。短時間から練習する |
| しつけやすさ | 利口だが、優しく短いトレーニングが向く |
| 初心者向き | 呼吸・暑さ・目・膝の健康管理を理解できれば候補 |
狆は日本を原産国とする歴史の長い愛玩犬です。
JKCの犬種標準では、732年に朝鮮半島の新羅から日本の宮廷へ献上された犬が祖先のひとつと考えられていることが紹介されています。
その後も大陸から犬が渡来し、日本国内で長い年月をかけて現在の狆へ発展していったとされています。
江戸時代には江戸城などで室内愛玩犬として飼われ、明治時代以降も抱き犬として親しまれてきました。
現在のJKCでは9グループの愛玩犬に分類され、用途は「家庭犬」です。
小さな体に豊かな被毛を持ち、尾を背中の上へ優雅に背負う姿は狆らしい特徴です。
毛色は白を基本として黒または赤の斑が入り、顔では目の周囲から耳にかけて左右バランスの取れた斑が望ましいとされています。
体高は牡で25cm前後、牝はそれよりやや小さいとされています。
家庭犬としては犬種標準の数字だけを見るのではなく、その犬自身の骨格に対して太りすぎていないか、痩せすぎていないかを確認することが重要です。
2. 狆の性格
狆は一般に、穏やかで利口、家族へ愛情を向けやすい犬種です。
- おとなしく落ち着いている犬が多い
- 家族との距離が近い
- 利口で周囲をよく観察する
- 遊び好きな一面もある
- 環境へ適応しやすい犬も多い
- 知らない人には少し控えめな犬もいる
- 飼い主さんのそばで過ごすことを好みやすい
小型犬の中でも、常に活発に動き回るというより、家族の近くで静かに過ごしながら必要な時には遊ぶという生活を好む犬が多く見られます。
ただし、「狆はおとなしい」という犬種イメージだけで個体の性格を決めることはできません。
来客へ吠える犬、知らない人を警戒する犬、ほかの犬との距離を取りたがる犬、活発に遊ぶことが大好きな犬もいます。
子犬期の社会化、親犬から受け継ぐ気質、飼育環境、これまでの経験によって性格には違いが生まれます。
小さい犬だからと常に抱っこで移動するのではなく、自分の足で歩き、においを嗅ぎ、安全な範囲でさまざまな環境を経験させることも大切です。
3. 狆の飼いやすさ
狆は体が小さく、必要な運動量も極端に多くないため、室内で暮らしやすい犬種です。
広い庭がなくても、毎日の散歩と室内での遊びを組み合わせれば運動の機会を作ることができます。
全身を定期的に短くカットする犬種ではないため、プードルやビション・フリーゼとは被毛管理の方法も異なります。
一方、長い被毛にはブラッシングが必要で、目の周囲や顔、耳、足先なども日常的に確認したい犬種です。
- 短頭種として呼吸状態を確認する
- 夏の高温多湿を避ける
- 目を毎日確認する
- 毛玉を防ぐためブラッシングする
- 膝へ負担をかけない環境を作る
- 体重を増やしすぎない
- 歯磨きを習慣にする
- 家族と離れる練習も行う
特に注意したいのが暑さです。
鼻の短い犬はパンティングによる放熱が十分に行えない場合があり、暑さと湿度が重なると体温が上がりやすくなります。
真夏の散歩時間だけでなく、留守番中の室温、車内、日当たりの良い部屋、興奮して遊び続ける場面にも注意しましょう。
4. 狆は初心者でも飼いやすい?
狆は、犬種特有の健康管理を理解できるのであれば、初めて犬を迎える人にも候補になる犬種です。
体が小さく、必要な運動量も比較的穏やかで、利口な犬が多いことは暮らしやすさにつながります。
しかし、「初心者向き=健康管理が簡単」という意味ではありません。
- 夏にエアコンなどで室温を管理できる
- 呼吸音の変化を確認できる
- 毎日目を観察できる
- ブラッシングを続けられる
- 滑りにくい床を用意できる
- 小型犬を高い場所から飛び降りさせない
- 体重管理ができる
- 定期的な健康診断を受けられる
このような管理ができる家庭なら、狆の穏やかで愛情深い性格を楽しみながら暮らしやすいでしょう。
反対に、夏でも日中に長距離を走らせたい人や、犬とのランニングを日常的に楽しみたい人には向きにくい犬種です。
また、小さい子どもがいる家庭では、犬と子どもの双方を守るため、抱き上げ方や接し方を大人が見守る必要があります。
5. 狆の大きさ・体重

JKCでは狆の体高を、牡で25cm前後、牝は牡よりやや小さいとしています。
体重は犬種標準上の固定された数字だけで判断するのではなく、骨格や筋肉量に合った体型を保つことが重要です。
一般的には数kg程度の非常にコンパクトな犬ですが、同じ狆でも骨格や体格には個体差があります。
- 肋骨が軽く触れるか
- 上から見て腰に適度なくびれがあるか
- 横から見て腹部が適度に引き締まっているか
- 数か月で急に体重が増減していないか
狆では肥満を防ぐことが特に重要です。
余分な体重は膝などの関節へ負担をかけるだけでなく、短頭犬種では呼吸にも悪影響を与える可能性があります。
毎日のフードだけを見ず、おやつ、家族からもらう食べ物、トレーニングで使用した食べ物まで一日の摂取量として考えましょう。
6. 狆の平均寿命
獣医師による海外の犬種情報では、狆の平均寿命は10~12年程度がひとつの目安として紹介されています。
資料によってはこれより長い年齢幅が示されることもあり、平均寿命は愛犬が実際に何歳まで生きるかを予測する数字ではありません。
遺伝的な体質、呼吸器、心臓、目、膝、歯、体重、生活環境などによって寿命には大きな個体差があります。
狆では若い頃から呼吸状態と目を観察する習慣を作り、定期健診で心音や膝も確認してもらいましょう。
シニア期に入ったら、犬種特有の問題だけでなく、腎臓病、心臓病、腫瘍、関節疾患、歯周病など高齢犬全般で増える病気にも注意が必要です。
食欲、体重、飲水量、尿量、散歩の様子、寝ている時の呼吸など、普段の状態を知っておくことが小さな変化の早期発見につながります。
7. 狆に必要な運動量

狆は大型のスポーツ犬のように長距離を走り続ける運動を必要とする犬種ではありません。
健康な成犬では、毎日の軽い散歩と室内遊びを組み合わせ、体力と気分に合わせて運動します。
- 涼しい時間帯の短い散歩
- 自由ににおいを嗅ぐ時間
- おもちゃを使った室内遊び
- ノーズワーク
- 短時間のトレーニング
散歩は単に運動量を確保するだけではなく、外のにおい、音、景色に触れる大切な刺激にもなります。
小型犬だから室内だけで十分と決めつけず、安全な気候の日には外へ出る機会を作りましょう。
暑い日は時間より呼吸を優先する
狆は短頭犬種なので、夏の運動では特に注意が必要です。
- 呼吸音が普段より大きい
- 激しくパンティングする
- 歩く速度が急に落ちる
- 座り込む
- 大量のよだれが出る
- 舌が大きく広がる
このような変化があれば、予定していた散歩時間を達成することよりも休ませることを優先します。
舌や歯ぐきが青紫・灰色になる、倒れる、ふらつく、意識が悪い、明らかに呼吸が苦しい場合は緊急です。すぐに動物病院へ連絡してください。
8. 狆の抜け毛・お手入れ
狆は絹糸のような豊かな被毛を持つため、定期的なブラッシングが必要です。
見た目ほど密集した被毛ではない犬もいますが、耳の後ろ、胸元、脇、尾、後ろ足の飾り毛などは絡まりやすいため丁寧に確認します。
- 週に数回を目安に優しくブラッシングする
- 毛玉ができやすい場所を確認する
- 目の周囲を清潔に保つ
- 耳の中を定期的に確認する
- 爪を伸ばしすぎない
- 足裏の毛が滑る場合は整える
- 歯磨きを習慣にする
強く引っ張って毛玉を取ろうとすると皮膚を傷めたり、ブラッシング嫌いになったりすることがあります。
毛先から少しずつほぐし、嫌がる前に短時間で終了する習慣を作りましょう。
狆は目のチェックを毎日行いたい
狆では被毛のお手入れと同じくらい目の観察が重要です。
- 左右とも同じように目を開けているか
- 白目が赤くなっていないか
- 涙や目やにが急に増えていないか
- 黒目が白・青っぽく濁っていないか
- 前足で目をこすっていないか
- まぶたが内側へ入り込んでいないか
片目だけ閉じる、何度もしょぼしょぼするなどの変化は、目の表面に痛みがある時にも見られます。
「少し毛が入っただけ」と決めつけず、続く場合は早めに診察を受けてください。
・犬が目をしょぼしょぼする原因とは?片目を細める時の危険サインと受診目安
9. 狆は留守番しやすい?
狆は家族との距離が近く、人のそばで過ごすことを好む犬が多いため、迎えた日から長時間の留守番が得意とは限りません。
常に抱っこしたり一緒に移動したりする生活だけでは、飼い主さんと離れることが苦手になる場合があります。
- 同じ部屋で一人でベッドに休む
- 飼い主さんが短時間別室へ移動する
- 数十秒だけ玄関の外へ出る
- 落ち着ける範囲で時間を少しずつ延ばす
留守番練習では、犬が強い不安状態になる前に戻ることが大切です。
吠え続ける、ドアを引っかき続ける、大量によだれが出る、排泄を失敗するなどの状態が強い場合は、単なるわがままと決めつけないでください。
また、狆の留守番では温度管理が非常に重要です。
真夏にエアコンのない室内へ短頭犬種を長時間残すことは危険です。日差し、室温、湿度を確認し、安全に過ごせる環境を整えましょう。
・犬の留守番のしつけ方とは?ひとりで待てない時の練習方法を解説
10. 狆のしつけのしやすさ
JKCが「利口」と表現するように、狆は人の様子をよく観察し、学習できる犬種です。
ただし、強く叱ったり力で従わせたりする方法よりも、できた行動を食べ物や遊び、褒め言葉で評価するトレーニングが適しています。
- 名前を呼んだら飼い主さんを見る
- おすわり
- 待て
- おいで
- ハウス
- トイレ
- リードで落ち着いて歩く
- 拾い食いを防ぐ
- ブラッシングを受け入れる
- 目・耳・口・足先を触られることに慣れる
一度に長時間練習するより、数分程度の短いセッションを一日に複数回行う方が集中しやすいでしょう。
また、狆は小さいため、人間が抱き上げて問題を回避できてしまうことがあります。
しかし、おいで、待て、ハウスなどの基本行動は、災害時や動物病院、散歩中の安全確保にも役立ちます。
11. 狆の無駄吠え・噛み癖などの注意点
狆は一般に非常に吠え続ける犬種として知られているわけではありませんが、全く吠えない犬種ではありません。
- インターホン
- 玄関前の足音
- 窓から見える人や犬
- 要求
- 不安
- 興奮
- 留守番
吠えた時に大きな声で叱るだけでは、犬からすると一緒に吠えているように感じたり、不安をさらに強めたりする場合があります。
窓の外へ反応するなら視界を調整し、インターホンへ反応するなら音量を抑えた練習から始めるなど、原因に合わせて環境を整えます。
静かに飼い主さんを見る、マットへ移動する、ハウスへ入るなど、吠える代わりに行う行動を教える方法もあります。
子犬では甘噛みも見られます。
手をおもちゃ代わりにして興奮させ続けず、噛んでよいおもちゃへ誘導し、疲れすぎる前に休憩を入れます。
成犬やシニア犬が突然噛むようになった場合は、性格の問題と決めつけず、目、歯、耳、首、背中、膝などの痛みがないか確認してください。
12. 狆がなりやすい病気・注意したい健康問題

狆を迎えるなら、短頭犬種としての呼吸と暑さへの注意に加えて、目、膝、心臓、遺伝性疾患について知っておくことが大切です。
海外のナショナルブリードクラブでは、繁殖犬の健康検査として膝蓋骨評価、心臓検査、眼科専門医による検査が推奨されています。
ただし、ここで紹介する病気がすべての狆に発症するわけではありません。
犬種で報告される健康問題を知る目的は、病気と決めつけることではなく、異常を早く発見し、適切な受診や繁殖時の健康確認につなげることです。
短頭種気道症候群(BOAS)
狆は鼻の短い短頭犬種です。
短頭種気道症候群では、狭い鼻孔、長すぎる軟口蓋、喉頭周辺の異常などが単独または複数重なり、空気が通りにくくなる場合があります。
- 起きている時もガーガー・ブーブーと呼吸音がする
- 大きないびきをかく
- 少し歩いただけで強く息切れする
- 暑い日に極端に弱い
- 運動を途中でやめる
- 食事や飲水時にむせる
- 重症では歯ぐきが青紫になる
- 倒れる・失神する
鼻の短い犬が多少音を立てることはありますが、生活へ支障が出るほどの呼吸困難を「犬種だから正常」と考えるべきではありません。
体重過多は呼吸への負担を増やす可能性があるため、適正体重を維持します。
首輪で首を強く圧迫するより、体格に合ったハーネスが選択肢になる場合もあります。
・犬の短頭種気道症候群(BOAS)とは?いびき・ガーガー呼吸の症状と手術、受診目安を解説
・犬の呼吸が荒い原因とは?安静時もハァハァする時の危険サインと受診目安
熱中症
短頭犬種である狆では、暑さと湿度への対策が重要です。
短頭犬では空気の通り道が狭い犬がいるため、パンティングによって効率よく熱を逃がしにくい場合があります。
- 激しいパンティング
- 大量のよだれ
- 体が非常に熱い
- 歩けない・ふらつく
- 嘔吐や下痢
- ぐったりする
- 意識状態が悪くなる
このような状態では緊急性があります。
炎天下の散歩だけでなく、暑い車内、エアコンのない部屋、直射日光が入る室内、湿度が高い夜間の散歩にも注意してください。
白内障などの眼科疾患
狆では眼科検査が繁殖犬の推奨健康検査に含まれており、日常生活でも目のチェックが重要です。
獣医師による犬種情報では、白内障、眼瞼内反、異常なまつ毛などが狆で注意したい眼科疾患として紹介されています。
- 目が白く濁る
- 物へぶつかる
- 段差をためらう
- 片目を閉じる
- 白目が赤い
- 涙が急に増える
- 前足で目をこする
眼瞼内反では、まぶたが内側へ入り込み、被毛やまつ毛が角膜へ触れて痛みや角膜潰瘍につながることがあります。
また、本来とは異なる位置に生えたまつ毛が角膜へ刺激を与える場合もあります。
目を痛がっている時に、人間用の目薬や過去に処方された目薬を自己判断で使用しないでください。
・犬の目が白く濁る原因とは?白内障・緑内障など注意したい病気と受診目安
・犬が目をしょぼしょぼする原因とは?片目を細める時の危険サインと受診目安
膝蓋骨脱臼(パテラ)
狆では膝蓋骨の評価も繁殖犬の推奨健康検査に含まれています。
膝蓋骨脱臼は、膝のお皿にあたる膝蓋骨が本来の位置から外れる状態です。
- 突然後ろ足を上げる
- 数歩だけ3本足になる
- スキップするように歩く
- 後ろ足を伸ばしてから普通に歩く
- 階段やジャンプを嫌がる
軽度ではほとんど症状がない犬もいますが、繰り返し脱臼すると関節炎や慢性的な痛みにつながる場合があります。
フローリングには滑り止めを敷き、ソファやベッドなど高い場所から何度も飛び降りる環境を避けます。
ただし、床対策や体重管理だけで膝蓋骨脱臼そのものが治るわけではありません。
・犬の膝蓋骨脱臼(パテラ)とは?スキップ歩行・グレード別症状と受診目安を解説
心臓病
狆では心臓検査も繁殖犬の推奨健康検査に含まれています。
獣医師による犬種情報では、僧帽弁の変性による心臓病が狆でみられる健康問題のひとつとして紹介されています。
初期には飼い主さんが分かる症状がなく、健康診断で心雑音を指摘されて初めて気づくこともあります。
- 咳が増えた
- 以前より疲れやすい
- 散歩で歩かなくなった
- 安静時の呼吸が速い
- 夜に落ち着かない
- 呼吸が苦しそう
ただし、咳や呼吸の荒さは心臓病だけでなく、BOAS、気管、肺などさまざまな原因で起こります。
症状だけで原因を決めつけず、聴診や画像検査など必要な検査を受けてください。
GM2ガングリオシドーシス
GM2ガングリオシドーシスは、狆で知られている遺伝性の神経疾患です。
神経系の機能が徐々に障害され、若い犬で症状が現れる場合があります。
- 歩き方が不安定になる
- 体の動きをうまく調整できない
- 頭部などに震えが出る
- 視覚に異常が出る
- 食べにくくなる
- 行動が変化する
珍しい病気ではありますが、遺伝性疾患であるため、子犬を迎える場合にはブリーダーへ遺伝子検査や血統内での発症歴について確認する材料になります。
歩き方がおかしい、震えがあるといった症状だけでGM2ガングリオシドーシスと判断することはできません。
低血糖、脳・脊髄疾患、中毒、内耳疾患など別の原因も考えられるため、神経症状があれば早めに動物病院へ相談してください。
13. 狆の食事・ドッグフード選び

狆だから必ず犬種専用のドッグフードを選ばなければならないわけではありません。
年齢、体重、活動量、避妊・去勢、体質、持病などに合った総合栄養食を基本にします。
体重を増やしすぎない
狆では適正体重の維持が重要です。
肥満になると膝へ負担がかかり、短頭犬種では呼吸のしづらさや暑さへの弱さが目立ちやすくなる可能性があります。
- フードを計量する
- おやつも一日の摂取量へ含める
- 定期的に体重を測る
- 肋骨と腰のくびれを確認する
しつけでおやつを多く使う場合は、一粒を小さくしたり、普段のフードを取り分けて報酬に使ったりすると総摂取量を管理しやすくなります。
小さな子犬は食事回数にも注意する
狆の子犬は体が非常に小さいため、一度に大量の食事を与えるのではなく、成長段階に合わせて一日の食事を複数回に分けることがあります。
食事回数や必要カロリーは月齢、体重、フードによって異なるため、購入元や動物病院と相談して調整してください。
子犬が食べない、震える、ぐったりする場合は、単なる好き嫌いと決めつけず早めに相談しましょう。
食後に呼吸が苦しそうなら確認する
短頭犬種では、食事中に空気を飲み込んだり、飲み込みと呼吸のバランスが取りにくかったりする犬もいます。
毎回激しくむせる、吐き戻す、食後に呼吸が苦しくなる場合は、早食いだけと決めつけず獣医師へ相談してください。
療法食やサプリメントについても、病気がある場合は自己判断ではなく獣医師と相談して選びます。
14. 狆の子犬期の注意点

狆の子犬期では、社会化と基本的なしつけに加え、将来の健康管理を楽にするための「体を触られる練習」が重要です。
- ブラシへ慣らす
- 顔や目の周囲へ触られることに慣らす
- 耳を見られることへ慣らす
- 口元へ触られることへ慣らす
- 歯磨きを練習する
- 爪切りへ慣らす
- ハーネスとリードへ慣らす
- 動物病院で体を触られることへ慣らす
練習は無理やり押さえ込んで行うのではなく、一瞬触る、褒める、おやつを与えるという短い練習から始めます。
子犬の呼吸状態を確認する
BOASは高齢犬だけの問題ではありません。
子犬の頃から鼻孔が非常に狭い、少し遊ぶだけで苦しくなる、起きている時も大きな呼吸音があるなどの場合は早めに相談してください。
「短頭種の子犬だから普通」「大きくなれば自然に治る」と自己判断しないことが重要です。
高い場所からの転落を防ぐ
狆は体が小さいため、ソファやベッド、人の腕の高さでも大きな落下事故につながることがあります。
滑りやすい床や何度も飛び降りる生活は膝への負担にもなります。
ステップを設置する場合も、犬が安全に使える高さと滑りにくさを確認しましょう。
親犬の健康検査を確認する
子犬を迎える場合は、見た目や価格だけでなく親犬の健康情報を確認することが大切です。
- 膝蓋骨の評価
- 心臓検査
- 眼科検査
- 遺伝性疾患に関する検査や発症歴
健康検査を受けた親犬から生まれたから絶対に病気にならないという意味ではありません。
しかし、繁殖時に犬種の健康問題へどの程度配慮しているかを判断する重要な材料になります。
15. 狆のシニア期の注意点
狆がシニア期に入ったら、若い頃から注意してきた呼吸、目、膝に加えて、心臓や腎臓、歯、筋力低下など高齢犬全般の変化も確認します。
- 以前より息切れしやすい
- 寝ている時の呼吸が速くなった
- 咳が増えた
- 目が白く見える
- 片目を閉じる
- 物へぶつかる
- 後ろ足を上げる
- 階段を嫌がる
- 散歩時間が急に短くなった
- 体重が増えた・減った
- 水を飲む量が増えた
- 口臭が強くなった
「もう年だから歩かない」「年齢のせいで息切れする」と考えたくなることがありますが、体調変化の原因が老化だけとは限りません。
心臓病、BOAS、関節痛、目の病気、腎臓病、貧血などが隠れている可能性もあります。
以前と比べて何が変わったかを記録し、安全に撮影できる場合は歩き方や呼吸の動画を受診時に見せると参考になります。
健康で歩ける犬では、年齢を重ねても無理のない範囲で散歩を続けることが筋肉や生活リズムの維持につながります。
ただし、若い頃と同じ距離や速度を達成することを目標にせず、その日の体調、気温、呼吸を優先してください。
16. 狆が向いている人
狆は次のような人と相性を作りやすい犬種です。
- 穏やかな小型犬と暮らしたい人
- 犬と室内でゆっくり過ごす時間を大切にしたい人
- 毎日軽い散歩や遊びができる人
- 被毛のブラッシングを続けられる人
- 目を毎日確認できる人
- 夏の室温を適切に管理できる人
- 呼吸状態を日常的に観察できる人
- 体重と膝の負担を管理できる人
- 定期的な健康診断を受けられる人
マンションなどでも暮らしやすい犬種ですが、体が小さいから散歩も遊びも不要というわけではありません。
人と過ごすことを好みやすいため、毎日のコミュニケーションを楽しめる家庭との相性が良いでしょう。
反対に、真夏でも長時間屋外で活動したい人や、犬と長距離ランニングを楽しみたい人には向きにくい犬種です。
また、「鼻の短い犬はいびきやガーガー呼吸があって当然」と考え、呼吸状態を確認しない飼い方もおすすめできません。
狆の優雅な外見を愛することと、呼吸、目、膝、心臓などの健康を守ることを両立させる必要があります。
17. 狆のよくある質問
Q. 狆は初心者でも飼いやすいですか?
体が小さく、穏やかで利口な犬が多いため、初心者にも候補になります。ただし短頭犬種なので、呼吸、暑さ、目、膝などの健康管理を理解する必要があります。
Q. 狆はどれくらいの大きさになりますか?
JKCでは牡の体高を25cm前後とし、牝は牡よりやや小さいとしています。体重は数kg程度の犬が多いですが、骨格や個体によって差があります。
Q. 狆の寿命は何年くらいですか?
海外の獣医師による犬種情報では10~12年程度がひとつの目安です。ただし、実際の寿命は健康状態や遺伝、生活環境などによって異なります。
Q. 狆は散歩しなくても大丈夫ですか?
室内犬でも散歩はおすすめです。激しい運動を大量に必要とする犬種ではありませんが、健康な成犬では軽い散歩と室内遊びを組み合わせましょう。暑い日は呼吸状態を優先してください。
Q. 狆はいびきをかくのが普通ですか?
短頭犬種ではいびきや呼吸音が出ることがありますが、非常に大きないびき、起きている時の強い呼吸音、少し歩いただけで苦しくなる状態まで正常とは考えません。BOASがないか相談する価値があります。
Q. 狆は暑さに弱いですか?
はい。鼻の短い犬では体温を逃がすことが苦手な場合があります。夏は早朝や夜でも気温・湿度を確認し、室内では必要に応じてエアコンを使用してください。
Q. 狆は毛が抜けますか?
抜け毛はあります。豊かな飾り毛があるため、週に数回を目安にブラッシングし、耳の後ろや脇など毛玉になりやすい場所を確認しましょう。
Q. 狆が片目を閉じています
角膜の傷、眼瞼の異常、まつ毛による刺激など目に痛みがある可能性があります。涙、充血、濁り、目をこする症状がある場合は早めに動物病院へ相談してください。
Q. 狆は白内障になりやすいですか?
狆では眼科検査が繁殖犬の推奨健康検査に含まれ、白内障も注意したい眼疾患のひとつとして紹介されています。ただし、すべての狆が白内障になるわけではありません。
Q. 狆が時々後ろ足を上げます
膝蓋骨脱臼で見られることがある歩き方です。ただし、足先のケガ、靭帯、股関節など別の原因もあります。繰り返す場合や痛がる場合は診察を受けてください。
Q. 狆は留守番できますか?
個体差があります。家族との距離が近い犬が多いため、最初から長時間留守番させず短時間から練習します。夏は留守番時間に関係なく室温と湿度の管理が必要です。
Q. 狆で特に注意したい病気は?
短頭種気道症候群、熱中症、膝蓋骨脱臼、白内障を含む眼科疾患、心臓病、GM2ガングリオシドーシスなどについて知っておくとよいでしょう。すべての狆に発症するわけではありません。
まとめ|狆は穏やかで利口な日本原産の家庭犬、呼吸・暑さ・目・膝の管理が重要

狆は、白地に黒または赤の斑が入る豊かな被毛、大きな丸い目、短い鼻、優雅な姿が特徴的な日本原産の小型犬です。
JKCでは用途を「家庭犬」とし、利口でおとなしく、愛らしい性質を持つ犬種としています。
長い歴史を持ち、日本の宮廷や上流社会で愛玩され、現在も家庭の伴侶犬として飼育されています。
体が小さく、激しい運動を大量に必要としないため、マンションなどでも暮らしやすい犬種です。
一方、狆との暮らしでは短頭犬種としての健康管理を忘れてはいけません。
大きないびき、起きている時のガーガーする呼吸音、少し歩いただけで強く息切れする、暑さに極端に弱いといった状態を「狆だから普通」と決めつけないでください。
BOASによって呼吸が妨げられている犬では、運動、睡眠、食事、体温調節など日常生活のさまざまな場面へ影響することがあります。
夏は高温多湿を避け、涼しい時間帯に散歩し、室内では安全な温度を保ちます。
適正体重の維持も、呼吸と膝への負担を減らすために重要です。
また、狆では目の健康にも注意します。
白内障、眼瞼内反、異常なまつ毛による刺激などが知られており、片目を閉じる、目をしょぼしょぼする、赤い、涙が増える、白く濁るといった変化は早めの受診につなげましょう。
繁殖犬では、膝蓋骨評価、心臓検査、眼科検査が海外のナショナルブリードクラブで推奨されています。
遺伝性疾患としてGM2ガングリオシドーシスも知られているため、子犬を迎える時には親犬の健康検査や血統内の健康情報を確認することも大切です。
被毛は定期的にブラッシングし、耳の後ろや脇、尾などの毛玉を防ぎます。
子犬期から目、口、足先、耳などへ優しく触られる練習をしておけば、生涯の健康管理もしやすくなります。
狆は、日本で長い歴史を重ねてきた優雅で愛情深い家庭犬です。小さくおとなしいという飼いやすさだけを見るのではなく、呼吸、暑さ、目、膝、心臓、遺伝性疾患まで理解し、小さな変化を「犬種だから仕方ない」で済ませないことが、長く安心して暮らすための大切なポイントです。


