
アラスカン・マラミュートは、分厚い被毛、力強い骨格、立った三角形の耳、背中の上へ豊かに掲げられる尾を持つ、アメリカ合衆国原産の大型犬です。
シベリアン・ハスキーと似た外見から混同されることもありますが、アラスカン・マラミュートはより重量感があり、本来はスピードを競うためではなく、重い荷物を長距離運ぶために発達してきた橇犬です。
ジャパンケネルクラブ(JKC)の現行犬種標準でも、用途は正確に「橇犬」とされています。
JKCでは、力強さと耐久力を備えた犬種であり、レース用の高速な橇犬として作出された犬ではないことも明記されています。
性格は愛情深く友好的で、家族と遊ぶことを好む犬が多い一方、自立心、豊富な運動欲求、穴掘り、物を引く力、小動物を追う本能など、北方作業犬らしい特徴もあります。
そして日本で暮らす場合に特に重要なのが暑さ対策です。極寒の環境で働ける厚い被毛を持つため、高温多湿の夏は大きな負担になります。
この記事では、アラスカン・マラミュートの性格、飼いやすさ、大きさ、寿命、運動量、抜け毛、留守番、しつけから、股関節、眼科、AMPNなど犬種クラブが現在重視している健康問題まで、実際の生活を想定して詳しく解説します。
- 1. アラスカン・マラミュートの基本情報
- 2. アラスカン・マラミュートの性格
- 3. アラスカン・マラミュートの飼いやすさ
- 4. アラスカン・マラミュートは初心者でも飼いやすい?
- 5. アラスカン・マラミュートの大きさ・体重
- 6. アラスカン・マラミュートの平均寿命
- 7. アラスカン・マラミュートに必要な運動量
- 8. アラスカン・マラミュートの抜け毛・お手入れ
- 9. アラスカン・マラミュートは留守番しやすい?
- 10. アラスカン・マラミュートのしつけのしやすさ
- 11. 無駄吠え・噛み癖などの注意点
- 12. アラスカン・マラミュートがなりやすい病気・注意したい健康問題
- 13. アラスカン・マラミュートの食事・ドッグフード選び
- 14. アラスカン・マラミュートの子犬期の注意点
- 15. アラスカン・マラミュートのシニア期の注意点
- 16. アラスカン・マラミュートが向いている人
- 17. アラスカン・マラミュートのよくある質問
- まとめ|アラスカン・マラミュートは力と持久力を備えた愛情深い橇犬
- 【最新版】私がおすすめする犬用品10選
1. アラスカン・マラミュートの基本情報
アラスカン・マラミュートは、北極圏で人とともに生活し、荷物を運んできた非常に歴史の古い橇犬のひとつです。
JKCでは、アラスカ西部の海岸地方に暮らしていたマラミュート族が、そり引き、狩猟、漁業などに利用していた犬であると説明しています。
後に賞金をかけたそりレースが流行した時期には他犬種との交雑も進みましたが、純粋犬を保存する動きが起こり、改良と保存が行われました。
現在も外見だけではなく、長距離で重い荷物を運べる健全な体、持久力、安定した歩様が犬種として重要視されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 犬種名 | アラスカン・マラミュート |
| 英名 | ALASKAN MALAMUTE |
| 原産国 | アメリカ合衆国 |
| FCIスタンダード | No.243 |
| JKCグループ | 5G:原始的な犬・スピッツ |
| 用途(JKC) | 橇犬 |
| サイト内サイズ分類 | 大型犬 |
| 好ましい体高 | 牡63.5cm/牝58.5cm |
| 好ましい体重 | 牡38kg/牝34kg |
| 平均寿命 | 10年前後がひとつの目安 |
| 運動量 | 多い |
| 被毛 | 非常に厚いダブルコート |
| 毛色 | ライトグレー~ブラック、セーブル~レッド、ホワイトなど |
| 抜け毛 | 非常に多い。換毛期は特に多量 |
| トリミング | 基本的に全身カット不要。ブラッシングと下毛管理が重要 |
| 留守番 | 練習可能だが、運動・交流不足に注意 |
| しつけやすさ | 学習能力は高いが、独立心があり一貫した練習が必要 |
| 初心者向き | 条件次第。運動・大型犬管理・暑さ対策を継続できることが重要 |

2025年のJKC犬種別犬籍登録頭数では、アラスカン・マラミュートは202頭で全犬種同率45位でした。
これは2025年の1年間にJKCへ新規犬籍登録され、血統証明書が発行された頭数です。現在日本で暮らしているアラスカン・マラミュートの総頭数ではありません。
2. アラスカン・マラミュートの性格
JKCでは、アラスカン・マラミュートを愛情深く友好的で、「ワン・マン・ドッグではない」と説明しています。
家族だけに強く執着してほかの人を完全に拒絶するというより、人との交流を楽しみやすく、遊び好きな犬が多い犬種です。
成犬になると威厳や落ち着きが増してくることも、犬種標準上の特徴とされています。
一方、橇犬として人の指示を受けながらも厳しい環境で働いてきた犬なので、自分で判断する力も持っています。
「飼い主さんの言うことをいつでも待っている犬」というより、状況を見て自分で動こうとする犬もいます。
この独立心を「頑固」「言うことを聞かない」とだけ考え、力で従わせようとすると関係が悪くなる可能性があります。
犬が何をすると褒められるのかを分かりやすくし、短いトレーニングを日常的に繰り返す方が適しています。
また、犬同士の関係には個体差があります。成犬では特定の犬、特に同性犬との相性が難しくなる場合もあるため、「犬好きな犬種だからドッグランなら誰とでも遊べる」と決めつけないことが大切です。

3. アラスカン・マラミュートの飼いやすさ
アラスカン・マラミュートは家族と一緒に活動することを楽しめる魅力的な犬ですが、一般的に「手軽に飼える大型犬」とは言いにくい犬種です。
まず体が大きく、筋肉と骨量があります。JKCの好ましい体重は牡38kg、牝34kgですが、犬種にはサイズの幅があるため、さらに大きくなる個体もいます。
本来重い荷物を引くための犬なので、散歩中に本気でリードを引けば非常に強い力がかかります。
そのため成犬になってから力で抑えるのではなく、子犬の頃から「リードが緩んだ状態で歩く」「飼い主さんへ意識を戻す」「刺激を見ても待つ」といった練習が必要です。
次に大きな問題が被毛です。
アラスカン・マラミュートは極寒地で体を守れる非常に厚いダブルコートを持ち、抜け毛も多い犬種です。
ブラッシング、室内の掃除、換毛期の下毛処理を日常生活の一部として受け入れられるかも重要になります。
さらに日本では夏の冷房が欠かせません。屋外で飼うことを前提にするより、夏は温度と湿度を管理できる室内で生活できる環境が必要です。
4. アラスカン・マラミュートは初心者でも飼いやすい?
犬を初めて飼う人でもアラスカン・マラミュートを迎えることは可能ですが、事前準備の重要性が高い犬種です。
「初心者だから無理」と決めるのではなく、次の条件を継続できるか考えてください。
- 毎日十分な運動時間を確保できる
- 大型犬の強い引く力に備えてしつけを続けられる
- 大量の抜け毛へ対応できる
- 一年を通してブラッシングを続けられる
- 夏は冷房を適切に使用できる
- 穴掘りや脱走への対策ができる
- 小動物を追う可能性を理解できる
- 大型犬の食費・医療費を想定できる
- 車など移動手段を準備できる
- シニア期の介護まで考えられる
特に「庭が広いから大丈夫」と考えないことが重要です。
広い庭があっても、人と一緒に歩く、探索する、遊ぶ、トレーニングするといった活動がなければ、十分な満足につながらない犬もいます。
犬のトレーニングを初めて行う場合は、問題が起きてからではなく子犬期からトレーナーやパピークラスを利用する方法もあります。
5. アラスカン・マラミュートの大きさ・体重
JKCの現行犬種標準では、アラスカン・マラミュートにはさまざまなサイズがみられるとしたうえで、好ましいサイズを示しています。
牡は体高63.5cm・体重38kg、牝は体高58.5cm・体重34kgです。
ただしJKCは、サイズそのものを犬種タイプ、プロポーション、歩様より優先すべきではないとも明記しています。
つまり、「巨大であればあるほど良い犬」という考え方は犬種標準とは異なります。
インターネットでは「ジャイアント・アラスカン・マラミュート」など非常に大きな個体を強調する表現を見かけることがありますが、日常の健康管理では大きさを競う必要はありません。
特に成長期に過剰な食事で急激に体重を増やすことは、関節へ余分な負担をかける可能性があります。
豊かな被毛で体型が見えにくいため、目で見るだけではなく肋骨へ触れ、腰のくびれや体重を定期的に確認してください。
6. アラスカン・マラミュートの平均寿命
Alaskan Malamute Club of Americaでは、アラスカン・マラミュートの平均寿命をおよそ10年としています。
ただし、これは個々の犬が10歳までしか生きられないという意味ではありません。
遺伝的背景、体格、適正体重、食事、運動、病気、事故予防、定期検診などによって寿命には大きな個体差があります。
大型犬では、関節の痛みや筋力低下が日常生活へ影響しやすいため、若い頃から肥満を避けて筋肉を維持することが重要です。
また、シニア期には「昔より散歩が遅くなった」「寝ている時間が増えた」という変化だけでなく、呼吸、食欲、飲水、排泄、歩様なども観察してください。
元気な時から定期的に健康診断を受け、その犬自身の正常な状態を把握しておくと、小さな変化に気づきやすくなります。
7. アラスカン・マラミュートに必要な運動量
アラスカン・マラミュートは、非常に体力と持久力のある作業犬です。
健康な成犬では毎日の十分な散歩を基本に、におい嗅ぎ、探索、トレーニング、ハイキングなどを組み合わせます。
ただ速く走ることだけが適した運動ではありません。
この犬種は本来、重量のある荷物を長距離運ぶ持久型の犬です。一定のペースで長く歩く、自然の中を探索する、人と一緒に課題へ取り組むといった活動も向いています。
一方、子犬へ成犬と同じ負荷をかける必要はありません。
骨や関節が成長している時期に、長距離の強制ランニング、重い荷物を引かせる、高い段差から何度も飛び降りる運動を日課にすることは避けます。

日本の夏は運動不足より熱中症予防を優先する
アラスカン・マラミュートとの生活で、日本の夏は特に重要です。
厚いダブルコートは寒冷地で体温を守るためには優れていますが、高温多湿の環境では熱を逃がしにくくなります。
夏の散歩は早朝や夜を中心にし、気温だけでなく湿度と路面温度も確認してください。
「今日は散歩時間が短いからかわいそう」と真夏の日中に無理に歩かせるより、安全な室内でノーズワークや短いトレーニングを行う方がよい日もあります。
運動後も呼吸が極端に荒い、涼しい室内へ移っても改善しない、ふらつく、ぐったりする、反応が鈍い場合は、単なる疲れと考えないでください。
・犬の呼吸が荒い原因とは?安静時もハァハァする時の危険サインと受診目安
8. アラスカン・マラミュートの抜け毛・お手入れ
アラスカン・マラミュートの抜け毛は非常に多く、犬種を迎える前に必ず理解しておきたいポイントです。
外側には粗くしっかりした被毛があり、その内側には密な下毛があります。
特に換毛期には大量の下毛が抜け、ブラッシングをしても次々と毛が取れることがあります。
抜け毛を完全になくすことはできません。掃除機、空気清浄機、洗濯、衣類の毛取りなども含めて「毛と一緒に暮らす」覚悟が必要な犬種です。
ブラッシングでは表面だけを撫でるのではなく、毛を少しずつ分けながら下毛の状態も確認します。
首回り、耳の後ろ、脇、後ろ足、尾などは毛が絡みやすいため注意しましょう。
一方、暑そうだからという理由だけでダブルコートを皮膚が見えるほど極端に短く刈ることはおすすめできません。
被毛には皮膚を外部刺激や日差しから守る働きもあります。毛玉や皮膚病などでカットが必要な場合は、獣医師や犬種の被毛を扱えるトリマーへ相談してください。
爪、耳、歯の管理も必要です。大きな成犬になってからお手入れを嫌がると、人の力で押さえることが難しくなります。
子犬のうちから短時間ずつ口元へ触れる練習を行いましょう。
・犬が歯磨きを嫌がる時の慣らし方|噛む・逃げる犬への7段階とNG対応

9. アラスカン・マラミュートは留守番しやすい?
アラスカン・マラミュートでも、段階的に練習すれば一定時間の留守番は可能です。
ただし、人と一緒に生活し、複数の犬と協力して働いてきた犬なので、毎日長時間ひとりで何もすることがない生活が向いているとは限りません。
運動や刺激が足りない状態で長時間留守番させると、物を壊す、穴を掘る、吠える、遠吠えする、脱走を試みるなどの行動につながることがあります。
留守番前には適度な散歩と排泄を済ませ、室内を十分に涼しくし、安全に休める場所を用意してください。
夏場は停電やエアコン停止も大きなリスクになります。長時間外出する場合は、室温を遠隔確認できる温度計などを利用する方法もあります。
留守番練習は、最初から数時間ではなく数秒、数分から始めます。
激しく吠え続ける、ドアや窓を壊す、自分を傷つけながら脱出しようとする、大量のよだれや排泄の失敗が続く場合は、単なる退屈ではなく強い不安が関係している可能性があります。
・犬の留守番のしつけ方とは?ひとりで待てない時の練習方法を解説
10. アラスカン・マラミュートのしつけのしやすさ
アラスカン・マラミュートは学習能力のある犬ですが、「何でも指示通りに動くこと」を目的に作られた犬種ではありません。
自立して判断する力も持つため、同じ練習を延々と繰り返すと飽きたり、自分にメリットを感じないと集中が切れたりすることがあります。
長時間叱り続けるより、短い練習を複数回行い、できた行動を明確に褒める方が分かりやすくなります。
特に大型犬では、次の基礎を優先してください。
- 名前を呼ばれたら飼い主さんを見る
- おすわり
- 待て
- 呼び戻し
- リードを緩めて歩く
- 玄関や車から勝手に飛び出さない
- くわえた物を放す
- 人へ飛びつかない
- マットやベッドで落ち着く
- 体を触られることへ慣れる
「待て」ができると、玄関、道路、車の乗り降りなど、さまざまな場面で安全管理に役立ちます。
・犬の待ての教え方とは?初心者でもできる基本のしつけ手順を解説
また、大型犬ではハーネスを無理に装着するのも難しくなります。子犬のうちから道具へ慣らしておきましょう。
・犬がハーネスを嫌がる時の慣らし方|逃げる・固まる・噛む犬への7段階
11. 無駄吠え・噛み癖などの注意点
アラスカン・マラミュートは、犬種によって独特の声の使い方をすることがあります。
一般的な「ワンワン」という吠え方だけでなく、遠吠えや声を出して人へ訴えるような行動をする犬もいます。
集合住宅では、吠える回数が少なくても声がよく響く場合があるため、近隣への配慮が必要です。
吠えや遠吠えが増えた場合は、単に声を止めることだけを目標にせず、運動不足、退屈、不安、要求、外から聞こえる音など原因を確認してください。
また、掘る行動にも注意します。
北方犬では地面を掘る行動がみられることがあり、庭に自由に出せる家庭ではフェンスの下から脱走できない構造になっているか確認してください。
フェンスそのものも、犬が飛び越えたり登ったりできない高さと構造が必要です。
小動物を追う本能が強い個体もいます。猫、鳥、ウサギなどとの同居は、犬種名だけで安全と判断せず、個体ごとの反応を確認してください。
子犬の甘噛みや物をくわえる行動については、噛んでもよいおもちゃを用意し、「放して」「交換」の練習をします。
力の強い成犬になってから口の物を毎回力ずくで取り上げる生活にならないよう、早い時期から練習しておきましょう。
12. アラスカン・マラミュートがなりやすい病気・注意したい健康問題
アラスカン・マラミュートだから必ず特定の病気になるわけではありません。
一方、Alaskan Malamute Club of America(AMCA)は、繁殖犬について現在、股関節、眼科、Alaskan Malamute Polyneuropathy(AMPN)の3項目をRequired Testsとして挙げています。
さらに肘関節、心臓、甲状腺、Cone Degeneration、Primary Ciliary DyskinesiaをRecommended Testsとしています。
「Required」と「Recommended」を同じ意味として扱わず、現行の犬種クラブ基準に沿って区別することが重要です。
股関節形成不全
股関節形成不全は、AMCAが繁殖犬の必須健康検査として股関節評価を挙げている理由のひとつです。
股関節の発育や骨同士の適合が十分でないと、関節が不安定になり、痛みや変形性関節症へつながることがあります。
- 立ち上がりに時間がかかる
- 階段を嫌がる
- 腰を振るように歩く
- 両方の後ろ足をそろえるように走る
- 散歩や運動の後に後ろ足をかばう
- 後ろ足の筋肉が減る
ただし、こうした症状は膝、背中、足先などの病気でもみられます。歩き方だけで股関節形成不全と判断することはできません。
・犬の股関節形成不全とは?後ろ足のふらつき・腰を振る歩き方・立ち上がりにくい時に注意したい病気
眼科疾患
専門的な眼科検査もAMCAのRequired Testsに含まれています。
眼科検査では、犬種で知られている遺伝性・家族性の眼の異常がないかを確認します。
日常生活では、目が赤い、目を細める、涙が増える、目が濁る、明るい場所を嫌がる、物にぶつかるといった変化に注意してください。
眼の異常は症状だけで原因を判断しにくく、急いで治療が必要な病気もあります。
Alaskan Malamute Polyneuropathy(AMPN)
AMPNは、アラスカン・マラミュートで知られている遺伝性の神経筋疾患です。
現在はNDRG1遺伝子変異を調べるDNA検査が利用でき、AMCAでは繁殖犬のRequired Testsに含めています。
発症する犬では若い時期から、後ろ足の歩き方がおかしい、運動すると疲れやすい、筋肉が減る、階段を上りにくい、声が変わる、呼吸音が変わるといった症状がみられる場合があります。
常染色体劣性遺伝であり、遺伝子変異を1コピー持つキャリア犬は、AMPNを発症している犬とは異なります。
DNA検査の目的は、繁殖時に発症する子犬が生まれる組み合わせを避けるための情報として利用することです。
一方、実際に犬がふらついている場合は、AMPNだけを原因と決めないでください。前庭疾患、脊髄疾患、関節痛、低血糖、中毒などでもふらつくことがあります。
・犬がふらつく原因とは?まっすぐ歩けない・倒れる時の危険サインと受診目安
Cone Degeneration(錐体変性)
Cone Degenerationは、AMCAがRecommended Testsに含めているDNA検査項目です。
網膜の錐体機能が失われることにより、明るい場所で見えにくくなる「昼盲」が特徴です。
影響を受ける犬では、子犬の時期から明るい場所で物へぶつかる、日差しを嫌がる、影のある場所から明るい場所へ出たがらないといった変化がみられることがあります。
一方、暗い場所での視覚は保たれることがあります。
この疾患も常染色体劣性遺伝で、1コピーだけを持つキャリア犬は通常の視覚を持ちます。
「遺伝子変異を持つ」という言葉だけで発症犬と考えないことが重要です。
肘関節・心臓・甲状腺
AMCAでは、肘関節、心臓、甲状腺の評価もRecommended Testsとして挙げています。
肘関節の問題では前足の跛行、心臓疾患では疲れやすさや失神、甲状腺機能の異常では元気低下や皮膚・被毛の変化などがみられることがあります。
ただし、これらの症状だけで原因を特定することはできません。
また、検査が推奨されていることと、その病気がすべてのアラスカン・マラミュートに高頻度で起こるという意味は同じではありません。
Primary Ciliary Dyskinesia(原発性線毛運動不全)
Primary Ciliary DyskinesiaもAMCAが現在Recommended Testsに含めるDNA検査項目です。
気道などにある線毛の働きが正常でないことで、呼吸器の問題につながる遺伝性疾患です。
呼吸器症状が続く場合は、犬種名だけでこの病気と決めず、感染症、気管支や肺の病気、心臓病など幅広い原因を確認する必要があります。

なおCHIC番号は、犬種ごとに指定された健康検査を受け、その結果を公開したことを示します。すべての項目が正常だったことを意味する番号ではありません。
13. アラスカン・マラミュートの食事・ドッグフード選び
アラスカン・マラミュートだから特定ブランドのフードを食べる必要があるわけではありません。
基本は、年齢、体重、活動量、健康状態に合った総合栄養食を選ぶことです。
特に子犬期は大型犬として成長するため、必要以上に高エネルギーな食事を与えて急速に大きくしようとしないことが重要です。
大型犬の成長期に適した総合栄養食を選び、太りすぎない状態を維持します。
「骨を強くしたい」と総合栄養食へカルシウムなどのサプリメントを自己判断で大量に追加することも避けてください。
成犬では運動量によって必要エネルギーが大きく変わります。
冬にたくさん活動する犬と、日本の夏に運動量が減る犬へ同じ量を与え続ければ、体重が増えることがあります。
豊かな被毛で腰のくびれが見えにくいため、手で肋骨を確認し、定期的に体重を測定してください。
病気が診断され療法食が必要になった場合は、病名と検査結果に応じて獣医師と相談します。
「アラスカン・マラミュートだから関節用療法食」「遺伝病が心配だから療法食」という選び方はしません。
14. アラスカン・マラミュートの子犬期の注意点
子犬期は、将来大型で力の強い犬になることを前提に生活習慣を作ります。
小さなうちは飛びつきも引っ張りもかわいく感じますが、成犬になって同じ行動をすると安全上の問題になります。
迎えた時から少しずつ、人へ飛びつかず挨拶する、玄関で待つ、リードを緩めて歩く、呼ばれたら戻るといった行動を教えましょう。
社会化は「誰とでも遊ばせること」ではない
人、犬、車、自転車、生活音、動物病院、ブラシなどへ少しずつ慣らします。
ただし、怖がっている犬を無理に知らない人へ抱かせたり、犬同士を近づけたりする必要はありません。
一定の距離から見て落ち着いていられる経験も重要な社会化です。
親犬の健康検査を確認する
子犬を迎える場合は「健康診断済み」という言葉だけでなく、親犬がどの健康検査を受けているか確認してください。
- 股関節評価
- 眼科検査
- AMPN DNA検査
- 肘関節評価
- 心臓評価
- 甲状腺評価
- Cone Degeneration DNA検査
- Primary Ciliary Dyskinesia DNA検査
最初の3項目はAMCAの現在のRequired Tests、後半はRecommended Testsです。
検査を受けたという事実だけでなく、結果そのものも確認してください。

さらに、大きくなってから診察を嫌がると通院が難しくなります。子犬の頃から診察に近い触り方へ慣らしておきましょう。
・犬が動物病院を嫌がる時の慣らし方|震える・逃げる・噛む犬への7段階
15. アラスカン・マラミュートのシニア期の注意点
シニア期になると、若い頃のような運動能力を維持できなくなることがあります。
それでも「年を取ったから」と急に散歩をやめるのではなく、体調に合わせて距離と速度を調整し、無理のない範囲で筋肉を維持してください。
若い頃は平気だった階段、車への乗り降り、滑るフローリングが負担になることもあります。
立ち上がりにくくなる前から滑り止めを用意し、車用スロープや介助ハーネスへ慣らしておくと役立ちます。
大型犬が自力で歩けなくなると、一人で抱き上げることは難しくなります。寝床から玄関、玄関から車、車から病院までどのように移動させるかも考えておきましょう。
また、次のような変化を年齢だけのせいにしないでください。
- 急に散歩を嫌がる
- 立ち上がるのに時間がかかる
- 後ろ足がもつれる
- 安静時も呼吸が速い
- 体重が急に減る
- 食欲が落ちる
- 水を飲む量が変わる
- 排尿や排便の様子が変わる
関節疾患、神経疾患、心臓病、内分泌疾患などが隠れている可能性があります。
16. アラスカン・マラミュートが向いている人
アラスカン・マラミュートは、犬と一緒に体を動かし、トレーニングやアウトドアを楽しみたい家庭に向いています。
- 大型で力の強い犬を安全に管理できる
- 毎日の運動時間を確保できる
- 犬とのトレーニングを継続できる
- 大量の抜け毛を受け入れられる
- 定期的なブラッシングを続けられる
- 日本の夏に冷房を十分利用できる
- 脱走しにくい住環境を整えられる
- 小動物への追跡本能を理解できる
- 大型犬の食費・医療費を想定できる
- シニア期の移動・介護まで準備できる
反対に、散歩へ使える時間が短い、夏に冷房を十分使用できない、抜け毛を極力避けたいという家庭では負担が大きくなります。
また、番犬目的だけで迎える犬種でもありません。
JKCでも友好的で愛情深いことが犬種の性格として示されており、人との交流を楽しむ犬が多くいます。
見た目の迫力より、「橇犬として人と共に働いてきた活動的な犬」として生活を考えることが大切です。
17. アラスカン・マラミュートのよくある質問
Q. アラスカン・マラミュートとシベリアン・ハスキーの違いは?
どちらも北方系の橇犬ですが、アラスカン・マラミュートは一般に骨量と体格があり、重い荷物を長距離運ぶことを重視して発達した犬です。シベリアン・ハスキーはより軽快な体格です。見た目だけでなく、作出目的にも違いがあります。
Q. アラスカン・マラミュートは大型犬ですか?
当サイトでは大型犬に分類します。JKCの好ましいサイズは牡63.5cm・38kg、牝58.5cm・34kgですが、犬種にはサイズの幅があります。
Q. ジャイアント・アラスカン・マラミュートという別犬種がいますか?
JKC・FCIの正式な犬種名はアラスカン・マラミュートです。犬種標準にはサイズに幅があることが示されていますが、極端に大型であることそのものが優先されるわけではありません。
Q. アラスカン・マラミュートは暑さに弱いですか?
厚いダブルコートを持つ寒冷地原産の犬なので、日本の高温多湿な夏は注意が必要です。冷房を使い、日中の散歩を避け、早朝や夜など涼しい時間に運動してください。
Q. 抜け毛は多いですか?
非常に多い犬種です。特に換毛期は大量の下毛が抜けるため、こまめなブラッシングと室内清掃が必要になります。
Q. 初心者でも飼えますか?
飼育は可能ですが、運動量、力の強さ、独立心、抜け毛、暑さ対策、脱走防止などを継続して管理できることが条件になります。初めての場合は子犬期から専門家のサポートを受ける方法もあります。
Q. マンションでも飼えますか?
マンションだから一律に不可能ではありませんが、管理規約の体重制限、十分な運動、声、抜け毛、共用部分での安全管理、災害時の移動方法などを確認する必要があります。
Q. 子どもと暮らせますか?
愛情深く友好的な犬が多いため家族と良い関係を築ける可能性があります。ただし大型犬なので、遊び中に子どもを転倒させることがあります。犬と小さな子どもだけにせず、大人が見守ってください。
Q. AMPNのキャリア犬は病気ですか?
AMPNは常染色体劣性遺伝で、原因変異を1コピーだけ持つキャリア犬は発症犬とは異なります。DNA検査は繁殖時に発症する子犬を生まない組み合わせを考えるために重要です。
Q. CHIC番号があれば健康な犬ですか?
CHIC番号は指定された健康検査を受け、結果を公開したことを示します。すべての検査結果が正常だったことや、将来病気にならないことを保証するものではありません。個々の結果を確認することが重要です。
まとめ|アラスカン・マラミュートは力と持久力を備えた愛情深い橇犬

アラスカン・マラミュートは、厚い被毛と力強い体を持つアメリカ合衆国原産の大型犬です。
JKCでの用途は「橇犬」。スピードを競う犬ではなく、重い荷物を長距離運べる力と耐久力を重視して発達してきました。
性格は愛情深く友好的で、家族と遊ぶことを楽しむ犬が多い一方、自立心や強い体力も持っています。
毎日の十分な運動、子犬期からの基礎トレーニング、脱走対策、被毛管理が必要です。
日本で暮らすうえでは、特に夏の暑さ対策を重視してください。厚いダブルコートを持つため、冷房を含めた室温・湿度管理は生活に欠かせません。
健康面では、AMCAが股関節、眼科、AMPNを繁殖犬のRequired Testsとしており、肘関節、心臓、甲状腺、Cone Degeneration、Primary Ciliary DyskinesiaをRecommended Testsとしています。
DNA検査で変異を持つことと発症すること、CHIC番号があることと全検査が正常であることは同じではありません。
犬種の特性を正しく理解し、豊富な運動、被毛のお手入れ、日本の暑さへの対策、大型犬の医療費やシニア介護まで準備できる家庭であれば、アラスカン・マラミュートは家族と一緒に活動することを楽しめる魅力的なパートナーになるでしょう。


