
愛犬が寝ていた場所に尿のしみができている。歩いている時にポタポタとおしっこが落ちる。トイレでは普通に排尿できるのに、眠っている間だけ尿が漏れている。
このような状態は、犬の尿失禁(尿漏れ)の可能性があります。尿失禁とは、犬が意識して排尿しているのではなく、本人の意思とは関係なく尿が漏れてしまう状態です。寝床で漏れる、歩行中に少しずつ滴る、排尿後に尿が垂れるなど、原因によって現れ方は異なります。
一方、トイレまで間に合わず大量に排尿する、何度もトイレへ行く、マーキングする、怖い時に排尿するといった状態は、すべてが「尿失禁」とは限りません。膀胱炎、多飲多尿、行動上の排尿、尿道閉塞に伴うあふれ出しなど、別の仕組みで粗相が起こることもあります。
特に、何度も排尿姿勢をとるのに尿がほとんど出ない、下腹部が張る、吐く、ぐったりする、後ろ足が急に動かない状態に尿漏れが重なる場合は緊急性があります。「漏れているから尿は出ている」と判断せず、動物病院へ連絡してください。
- 1. 犬の尿失禁・尿漏れとは?
- 2. 「尿失禁」とトイレの失敗を見分けるポイント
- 3. すぐ受診したい危険サイン
- 4. 犬がおしっこを漏らす主な原因
- 5. 避妊後のメス犬で多い尿道括約筋機能不全(USMI)
- 6. 子犬・若い犬の尿漏れでは異所性尿管に注意
- 7. 膀胱炎・尿路感染で間に合わず漏れることもある
- 8. 水をたくさん飲んで尿量が増えている場合
- 9. 神経の病気・脊髄の異常による尿失禁
- 10. 動物病院ではどんな検査をする?
- 11. 犬の尿失禁はどう治療する?
- 12. 自宅でできる尿漏れケア
- 13. 尿を漏らした犬を叱ってはいけない理由
- 14. 子犬の尿漏れで確認したいこと
- 15. シニア犬の尿漏れで確認したいこと
- 16. 受診までに記録しておきたいこと
- 17. 犬の尿失禁・尿漏れについてよくある質問
- まとめ|尿漏れは「寝ている時か・普通に排尿できるか」を確認しよう
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1. 犬の尿失禁・尿漏れとは?
尿失禁は、排尿を自分の意思でコントロールできず、尿が無意識に漏れる状態です。寝ている間にベッドが濡れる、立ち上がった場所に尿だまりが残る、歩きながら滴るなどが代表的な見え方です。
大切なのは、「家の中でおしっこをした=失禁」とは限らないことです。トイレの場所を理解したうえで、犬が自分から姿勢をとって排尿しているなら、頻尿、多尿、認知機能の変化、行動上の問題など別の原因を考えます。
- 寝ている間に寝床が濡れる
- 立ち上がった後に尿のしみが残る
- 歩いている時にポタポタ漏れる
- 排尿後にしばらく滴る
- 陰部や内股の被毛がいつも湿っている
- 犬自身が尿漏れに気づいていないように見える
- 尿で皮膚が赤くなる、におう
尿漏れの量は数滴のこともあれば、寝床が大きく濡れるほど出ることもあります。量だけでは原因を判断できないため、いつ漏れるのか、普通の排尿ができているか、排尿後に膀胱が空になっているかなどを合わせて評価します。
2. 「尿失禁」とトイレの失敗を見分けるポイント
尿失禁を考える時に最初に確認したいのは、犬が排尿していることを自覚しているかです。寝ている間に漏れて本人が気づかない場合は、尿をためる機能の問題が疑われます。一方、起きてトイレの場所へ移動し、自分で排尿姿勢をとっているなら、尿失禁ではなく頻尿や多尿の可能性があります。
寝ている時に漏れる
休んでいる時や熟睡中に尿が漏れ、起きた場所に尿だまりができるパターンは、尿道括約筋機能不全などでみられます。避妊済みのメス犬では特に重要な原因のひとつです。
起きて自分から大量に排尿する
水を飲む量が増え、トイレまで間に合わず大量に排尿する場合は、尿を作る量そのものが増えている可能性があります。腎臓病、糖尿病、ホルモン疾患などによる多飲多尿を確認します。
少量ずつ何度も排尿する
何度もしゃがむ、少量ずつしか出ない、血尿や排尿時の痛みがある場合は、膀胱炎や尿路結石など下部尿路の病気が疑われます。尿失禁とは対応が異なります。
マーキングや興奮時の排尿
特定の場所へ少量ずつマーキングする、強い興奮や緊張時だけ排尿するなどは、失禁とは別の行動であることがあります。ただし、行動の問題だと決めつける前に身体的な異常を除外することが大切です。

3. すぐ受診したい危険サイン
尿が漏れること自体は慢性的な問題として診察するケースも多いですが、次の症状が重なる場合は「よくある尿失禁」とは考えず、早めの受診が必要です。
- 何度も排尿姿勢をとるのに尿が出ない
- 尿が数滴しか出ず、お腹が張っている
- 嘔吐、ぐったり、食欲廃絶がある
- 血尿が多い、血の塊が出る
- 排尿時に強く痛がる
- 急に後ろ足が動かない、立てない
- 足先が裏返ったまま戻らない
- しっぽが急に動かなくなった
- 事故や転落の後から尿を漏らすようになった
- 意識がぼんやりしている
特に注意したいのが「尿が漏れているのに、正常な排尿ができない」ケースです。尿道が詰まったり膀胱がうまく収縮できなかったりすると、膀胱に尿がたまりすぎて少しずつあふれ出すことがあります。
何度も構えるのに尿が出ない場合は、犬の尿が出ない原因とは?何度も構える・少量しか出ない時の危険サインと受診目安も確認してください。完全な尿道閉塞は緊急です。
4. 犬がおしっこを漏らす主な原因
犬の尿失禁には、尿を膀胱へためておく機能の問題と、尿を正常に出し切れないことであふれる問題があります。さらに先天的な構造異常、神経障害、炎症、多飲多尿などが関係することもあります。
- 尿道括約筋機能不全(USMI)
- 異所性尿管など先天的な尿路異常
- 膀胱炎などによる強い尿意・過活動
- 尿道閉塞や膀胱収縮力低下による溢流性尿失禁
- 脊髄や末梢神経の病気・外傷
- 多飲多尿を起こす腎臓病、糖尿病、ホルモン疾患など
- 尿路結石や尿路の腫瘤
- 前立腺や尿道周囲の問題
尿失禁を考える時は、尿を「ためる」機能と「出す」機能を分けて考えると理解しやすくなります。尿をためる機能に問題がある犬では、普通に排尿できる一方、休息中などに無意識の漏れが起こります。尿を出す機能に問題がある犬では、膀胱に尿が残りやすく、膀胱が過度に膨らんだ結果として少量ずつあふれることがあります。
同じ「寝床が濡れる」という症状でも、若い頃からずっと漏れている犬と、避妊後しばらくして成犬になってから始まった犬、後ろ足の麻痺と同時に始まった犬では、考える原因が大きく異なります。
そのため受診時には、いつから始まったか、避妊・去勢の前後との関係、起きている時にも漏れるか、普通に勢いよく排尿できるかといった経過がとても重要です。
5. 避妊後のメス犬で多い尿道括約筋機能不全(USMI)
犬の尿失禁で重要な原因が、尿道括約筋機能不全(USMI)です。尿道を閉じて尿を膀胱内へ保つ力が十分でなくなり、膀胱内の圧力が尿道の閉鎖力を上回ると、意識せず尿が漏れます。
USMIは特に避妊済みのメス犬でよくみられます。寝ている時や横になって休んでいる時に漏れ、起きて散歩へ行けば普通に排尿できるというパターンが典型的です。ただし、未避妊のメスやオス犬でも尿道括約筋の問題は起こり得ます。
- 寝ている間に漏れる
- くつろいでいる時に尿だまりができる
- 本人が漏れたことに気づいていない
- 通常の排尿姿勢と尿の勢いは保たれている
- 毎日ではなく時々起こることもある
「避妊手術をしたから必ず尿失禁になる」わけではありません。また、避妊済みの犬が漏らしているからといって検査をせずUSMIと決めることもできません。尿路感染、結石、多飲多尿などを確認したうえで診断・治療します。
治療では、犬の状態に応じて尿道の閉鎖圧を高める薬やエストロゲン製剤などが検討されます。薬の種類や量には副作用と禁忌があるため、人用薬や他の犬の薬を使わず、獣医師の処方に従ってください。

6. 子犬・若い犬の尿漏れでは異所性尿管に注意
子犬の頃からずっと尿がポタポタ漏れる、外陰部の周囲がいつも濡れている、トイレでは排尿するのにそれ以外の時間も漏れている場合は、先天的な尿路の構造異常を確認します。
代表的なのが異所性尿管です。正常では腎臓から来た尿管は膀胱の決まった位置へ開口しますが、異所性尿管では尿管が正常とは異なる場所へ開き、尿が尿道括約筋を迂回することで漏れが続くことがあります。
異所性尿管は特に若いメス犬で尿失禁の原因として重要です。一方、成犬になってから気づかれるケースもあるため、「子犬ではないから先天性疾患ではない」と完全には除外できません。
- 子犬の頃から常に被毛が濡れている
- 普通に排尿した後も尿が漏れる
- 外陰部周囲の皮膚炎を繰り返す
- 尿路感染を何度も繰り返す
- トイレトレーニングをしても寝床が濡れる
診断には超音波検査だけでなく、CTや膀胱鏡などの精密検査が必要になることがあります。尿管の開口位置によっては、膀胱鏡を使ったレーザー治療や外科治療が検討されます。
7. 膀胱炎・尿路感染で間に合わず漏れることもある
膀胱炎などで膀胱が強く刺激されると、急な尿意が起こり、トイレまで我慢できず漏れるように見えることがあります。これは典型的なUSMIとは仕組みが異なります。
- トイレへ行く回数が急に増えた
- 一回の尿量が少ない
- 排尿姿勢が長い
- 血尿がある
- 尿のにおいが強い
- 陰部を繰り返しなめる
- 排尿時に鳴く、落ち着かない
このような症状がある場合は、犬の膀胱炎とは?頻尿・血尿・トイレが近い時に注意したい病気を解説も参考にしてください。感染が疑われる場合は、尿検査や尿培養で確認します。
尿路結石でも膀胱の刺激や尿道の通過障害が起こり、頻尿・血尿・排尿困難が見られます。犬の尿路結石とは?血尿・頻尿・おしっこが出にくい時に注意したい病気を解説もあわせて確認してください。
8. 水をたくさん飲んで尿量が増えている場合
尿をためる機能が正常でも、作られる尿の量が非常に多いと、膀胱が早くいっぱいになってトイレまで間に合わないことがあります。また、軽い尿道括約筋機能不全がある犬では、多尿によって膀胱内の圧力が上がることで尿漏れが目立つようになる場合があります。
多飲多尿の原因には、慢性腎臓病、糖尿病、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、一部の薬剤などがあります。尿漏れだけを見るのではなく、水を飲む量と一日の尿量が以前より増えていないか確認します。
腎臓病については、犬の腎臓病とは?多飲多尿・食欲不振・体重減少で注意したい病気を解説も参考にしてください。
粗相を減らしたいからと水を制限するのは危険です。多飲は、体が失っている水分を補うために起きている可能性があります。新鮮な水は自由に飲めるようにし、原因を調べてもらいましょう。
9. 神経の病気・脊髄の異常による尿失禁
排尿は膀胱と尿道だけでなく、脳・脊髄・末梢神経の複雑な働きで調整されています。そのため、脊髄疾患や神経の損傷が起こると、膀胱を正常に収縮できない、尿道を適切に緩められない、膀胱がいっぱいになった感覚をうまく伝えられないといった問題が起こります。
神経性の排尿障害では、尿が漏れるだけでなく、膀胱の中に尿が大量に残っていることがあります。たまった尿があふれて少しずつ漏れる「溢流性」の状態では、漏れているから排尿できていると考えるのは危険です。
- 後ろ足がふらつく、引きずる
- 自力で立てない
- 足先の甲を擦る
- しっぽの動きが弱い
- 腰や背中を痛がる
- 便まで漏らす
- 排尿姿勢をとれない
- 尿を出そうとしても勢いが弱い
このような神経症状と尿失禁が同時に急に出た場合は、家庭で膀胱を押して尿を出そうとせず、早めに診察を受けてください。膀胱の圧迫排尿は病態によっては難しく、強い圧をかけると危険です。
10. 動物病院ではどんな検査をする?
尿失禁の診断では、「漏れている」という情報だけでなく、通常の排尿が正常か、膀胱に尿が残っていないか、神経学的な異常がないかを順に確認します。
- 尿漏れが起こる時間・姿勢・頻度の聞き取り
- 実際の排尿姿勢や尿の勢いの確認
- 腹部・膀胱の触診
- 外陰部・包皮周囲の皮膚状態の確認
- 直腸診や尿道周囲の評価
- 歩き方、後ろ足、しっぽ、脊椎痛などの神経学的確認
- 尿検査・必要に応じた尿培養
- 血液検査
- 超音波・レントゲンなどの画像検査
- 必要に応じてCT、膀胱鏡などの精密検査
特に重要なのが、排尿後に膀胱へどれくらい尿が残っているかです。排尿後も膀胱が大きく、尿が多量に残っている場合は、尿を出し切れない排尿障害を考えます。反対に、普通に膀胱を空にできるのに休息中だけ漏れる場合は、尿をためる機能の問題を考える材料になります。
自宅で尿漏れの場面を安全に撮影できた場合は、短い動画や寝床の写真が診断の参考になることがあります。犬をわざと長時間我慢させたり、漏れるまで待って撮影したりする必要はありません。
尿検査では、細菌、血液、糖、蛋白、尿比重などを確認します。尿路感染が疑われる場合は培養検査を行うことがあり、採尿方法によって結果の解釈も変わります。血液検査では腎機能や血糖などを確認し、多飲多尿を起こす全身疾患が隠れていないか調べます。
超音波やレントゲンでは結石、膀胱壁の異常、腫瘤などを調べますが、異所性尿管など一部の構造異常は一般的な超音波だけで確定できないことがあります。症状と初期検査が合わない場合は、専門施設でCTや膀胱鏡を提案されることがあります。

11. 犬の尿失禁はどう治療する?
治療は原因によって大きく異なります。「尿漏れを止める薬を全員に使う」というものではありません。尿道括約筋機能不全、異所性尿管、尿路感染、神経障害、尿道閉塞など、原因ごとに治療を選びます。
治療効果も「完全に一滴も漏れなくなったか」だけで判断しません。週に何回漏れるか、寝具がどの程度濡れるか、皮膚炎が改善したか、犬と家族の生活負担が減ったかを記録すると、薬の調整や追加検査の判断に役立ちます。いったん良くなった後に再発した場合も、自己判断で薬を増やさず再診してください。
尿道括約筋機能不全の場合
尿道の閉鎖力を高める薬や、メス犬ではエストロゲン製剤などが検討されます。薬で十分な効果が得られないケースでは、専門施設で尿道周囲への充填処置や人工尿道括約筋など、追加の治療が検討される場合があります。
異所性尿管の場合
尿管の位置を正常な尿路へつなげるため、膀胱鏡を使ったレーザー処置や外科手術が検討されます。処置後も尿道括約筋機能不全を併発して尿漏れが残る犬では、追加治療が必要になることがあります。
感染・炎症・結石がある場合
尿路感染には検査結果に基づいた抗菌薬、結石には種類や場所に応じた食事療法・処置・手術などを行います。残っている抗菌薬を自己判断で与えたり、「尿路用」と書かれた療法食へ診断なしで切り替えたりしないでください。
神経性の排尿障害の場合
神経疾患そのものの治療に加えて、膀胱を安全に空にする管理、尿路感染の予防・治療などが必要になることがあります。排尿介助の方法は病態によって違うため、必ず動物病院で実際に教えてもらいます。
12. 自宅でできる尿漏れケア
原因を治療している間や、完全には漏れをなくせない犬では、皮膚を清潔に保ち、寝床を乾燥させ、生活の負担を減らすことが大切です。
- 濡れた寝具を早めに交換する
- 陰部・内股の被毛を尿で濡れたままにしない
- ぬるま湯などで必要な範囲をやさしく清潔にする
- こすらず十分に乾かす
- 防水シーツの上に洗える吸水性の高い寝具を使う
- トイレへ行く機会を増やす
- シニア犬では寝床からトイレまでの動線を短くする
- 滑る床にマットを敷く
尿が長時間皮膚へ触れると、外陰部や包皮周囲、内股に赤みやただれが起こることがあります。強い消毒薬、アルコール、人用の薬用クリームなどを自己判断で塗らないでください。皮膚炎が強い場合は獣医師へ相談します。
犬用おむつやマナーパンツは寝具を守る補助になりますが、長時間つけっぱなしにすると蒸れや皮膚炎につながります。濡れたら早めに交換し、外した時間に皮膚を乾かします。おむつで尿漏れを隠すだけで、原因の診察を先延ばしにしないことも重要です。
長毛犬では尿で濡れた毛が皮膚へ張り付きやすいため、必要に応じて動物病院やトリマーへ衛生的に整える方法を相談します。皮膚が赤い、ただれる、強いにおいがする、犬がしきりになめる場合は、尿やけだけでなく細菌や酵母による二次的な皮膚炎が加わっていないか確認してもらいましょう。

13. 尿を漏らした犬を叱ってはいけない理由
尿失禁は犬が意図して起こしている行動ではありません。寝ている間の尿漏れや神経性の失禁を叱っても、膀胱や尿道の機能は改善しません。犬が排尿そのものを飼い主さんに隠すようになると、症状の観察も難しくなります。
また、多飲多尿や膀胱炎で間に合わなかった犬も、「わざと粗相した」とは限りません。トイレトレーニングができていた犬が突然失敗するようになった場合は、再しつけの前に体調を確認してください。
特にシニア犬では、関節痛でトイレまで間に合わない、認知機能の変化で場所が分かりにくい、尿量が増えて我慢できないなど複数の要因が重なることがあります。
粗相の場所を掃除する時は、犬の目の前で怒鳴ったり鼻先を近づけたりせず、静かに片づけます。原因が分かるまではトイレの回数を増やし、成功しやすい環境へ調整してください。
14. 子犬の尿漏れで確認したいこと
子犬は膀胱が小さく排尿回数も多いため、トイレの失敗そのものは珍しくありません。しかし、寝ている時も常に尿が漏れる、排尿した直後にもポタポタ垂れる、外陰部周囲がいつも濡れている場合は、トイレトレーニングだけの問題ではない可能性があります。
特に異所性尿管などの先天的な構造異常では、若い時期から尿漏れが続くことがあります。尿による皮膚炎や尿路感染を繰り返すケースもあるため、「成長すれば治るだろう」と長期間放置しないでください。
子犬で確認したいのは、普通に排尿する時間があるか、尿の勢いはあるか、寝ている間にも漏れるか、生まれてからずっと続いているかです。迎えたばかりで過去の経過が分からない場合は、そのことも獣医師へ伝えます。
若い犬の尿漏れでは、尿検査だけでなく尿路の形を確認する画像検査が必要になることがあります。超音波で異常がはっきりしなくても、症状から異所性尿管が強く疑われる場合はCTや膀胱鏡が検討されます。

15. シニア犬の尿漏れで確認したいこと
シニア犬で尿漏れが始まった時に、「年だから仕方ない」と決めつけないことが大切です。尿道括約筋の機能低下だけでなく、腎臓病や糖尿病などによる多尿、膀胱炎、尿路結石、神経疾患、関節痛、認知機能の変化などが関係することがあります。
寝床で漏れるだけなのか、それとも水を飲む量と尿量が増えているのか、歩き方やしっぽの動きまで変わっているのかを確認します。体重減少、食欲低下、嘔吐など全身症状があれば、泌尿器だけでなく内科的な検査も必要です。
高齢犬では筋力や関節の問題から排尿姿勢を長く保てず、途中でよろけたり、トイレへ着く前に漏らしたりすることもあります。滑り止めマット、低い段差のトイレ、寝床に近い場所へのトイレ増設など環境面も見直します。
夜間だけ失敗が増えた場合も、単純な失禁とは限りません。夜間の多尿、認知機能の変化、足腰の痛みで起き上がるのに時間がかかるなどが重なることがあります。どの時間帯に多いか、寝たまま漏れているのか、自分で起きて排尿しているのかを分けて記録してください。
尿路感染を繰り返し、発熱・嘔吐・元気消失がある場合は腎臓側の感染も確認します。犬の腎盂腎炎とは?発熱・嘔吐・元気がない時に注意したい腎臓の細菌感染を解説も参考にしてください。
16. 受診までに記録しておきたいこと
尿失禁は「いつ・どんな時に漏れるか」が診断にとても重要です。可能な範囲で数日間記録しておくと、尿をためる問題なのか、出す問題なのかを考える手がかりになります。
- いつ尿漏れに気づいたか
- 寝ている時か起きている時か
- 毎日か、数日に一回か
- 数滴か、寝床が濡れるほどか
- 普通の排尿もできるか
- 尿の勢いは以前と同じか
- 排尿後にもポタポタ垂れるか
- 頻尿・血尿・悪臭がないか
- 水を飲む量が増えていないか
- 後ろ足・しっぽ・腰に変化がないか
- 避妊・去勢手術を受けた時期
- 使用している薬・サプリメント
- 皮膚の赤みや尿やけがないか
排尿回数が多い場合は、犬の尿の回数が多い原因とは?頻尿・多尿の違いと受診目安を解説も参考にしてください。血が混じる場合は犬の血尿の原因とは?赤いおしっこ・血が混じる時の危険サインと受診目安も確認しましょう。
できれば一日の飲水量も測ります。多頭飼育で正確に測れない場合は無理に分ける必要はありませんが、水皿の減り方が明らかに増えた、夜中にも何度も水を飲むようになったなどの変化は伝えてください。薬を飲み始めた時期と尿漏れの開始が近い場合も、薬名と開始日を記録します。
尿漏れの瞬間を撮影できなくても問題ありません。寝床の濡れ方、尿の色が分かる写真、いつ起こったかのメモだけでも役立ちます。診察のために水分を制限したり、排尿を我慢させたりしないでください。

17. 犬の尿失禁・尿漏れについてよくある質問
Q. 寝ている時だけ尿が漏れます。病気ですか?
尿道括約筋機能不全などでよくみられるパターンですが、それだけで原因は確定できません。尿路感染、多尿、先天的な構造異常なども確認する必要があります。繰り返す場合は尿検査を含めて相談してください。
Q. 避妊手術をしたメス犬は尿失禁になりやすいですか?
避妊済みのメス犬では尿道括約筋機能不全が重要な原因のひとつです。ただし、すべての避妊犬が発症するわけではなく、避妊済みだからという理由だけで診断はできません。ほかの尿路疾患を除外して治療を選びます。
Q. 犬用おむつを使えば病院へ行かなくてもいいですか?
おむつは寝具や床を守る補助にはなりますが、原因を治療するものではありません。尿道閉塞のあふれ出しや神経疾患など、放置すると危険な原因もあります。繰り返す尿漏れは診察を受けてください。
Q. 尿失禁の薬は一生飲み続けますか?
原因と治療反応によって異なります。尿道括約筋機能不全では長期的な投薬が必要になる犬もいますが、最小限の有効量へ調整したり、状態に応じて治療方法を変更したりすることがあります。自己判断で増減・中止せず再診で相談してください。
Q. 子犬がおしっこを漏らすのはトイレトレーニング不足ですか?
単なる失敗のこともありますが、寝ている時も漏れる、排尿後も滴る、陰部の被毛が常に濡れている場合は異所性尿管など先天的な異常を確認します。しつけだけで長期間様子を見ないでください。
Q. 尿がポタポタ出ているなら尿道閉塞ではありませんか?
数滴漏れていても、正常に排尿できているとは限りません。膀胱が過度にたまり、あふれている場合があります。何度も構えるのにまとまった尿が出ない、お腹が張る、吐く、ぐったりする場合は緊急受診してください。
Q. 尿失禁がある時は水を減らしてもいいですか?
自己判断で水を制限しないでください。多飲多尿を起こす病気では、水を飲むことが体の水分を維持するために必要です。水は自由に飲めるようにし、尿量が増えた原因を調べます。
まとめ|尿漏れは「寝ている時か・普通に排尿できるか」を確認しよう

犬の尿失禁は、本人の意思とは関係なく尿が漏れる状態です。寝ている時に寝床が濡れる、歩行中に尿が滴る、排尿後にも漏れるなどの形で気づくことがあります。
原因には、避妊済みのメス犬で重要な尿道括約筋機能不全、若い犬で注意する異所性尿管、膀胱炎や結石、神経疾患、尿道閉塞による溢流、多飲多尿を起こす全身疾患などがあります。「粗相した」「年だから」と決めつけず、漏れ方と通常の排尿をセットで確認してください。
何度も排尿姿勢をとるのに尿が出ない、数滴しか出ない、お腹が張る、吐く、ぐったりする、後ろ足が急に動かない場合は緊急性があります。おむつや水分制限だけで対処せず、動物病院で原因を確認しましょう。


