犬の慢性気管支炎とは?長引く咳の症状・原因と治療、受診目安を解説

愛犬の咳が何週間も続いている。

寝起きや散歩の後に「コンコン」「ケホケホ」と咳き込み、最後に吐きそうな動作をする。

元気や食欲はあるものの、以前より咳の回数が増えている。

このような長引く咳で確認が必要な呼吸器疾患のひとつが、犬の慢性気管支炎です。

慢性気管支炎は、肺へ空気を運ぶ気管支に慢性的な炎症が起こり、咳や過剰な粘液の分泌が続く病気です。

一般的には、ほかの病気では説明できない咳が2か月以上続くことが、診断を考える目安のひとつになります。

軽い咳だけで経過する犬もいますが、炎症が長く続くと気道が狭くなり、運動を嫌がる、呼吸が苦しくなるなど、日常生活へ影響する可能性があります。

口を開けて苦しそうに呼吸する、舌や歯ぐきが青紫色になる、咳の後に倒れる、呼びかけへの反応が弱い場合は、すぐに動物病院へ連絡してください。

慢性気管支炎の咳は、気管虚脱、肺炎、心臓病、感染症、気道内の異物などでも見られるため、咳の音だけで判断することはできません。

この記事では、犬の慢性気管支炎の症状、原因、なりやすい犬、検査、治療、自宅での管理、受診目安を解説します。

  1. 犬の慢性気管支炎とはどのような病気?
  2. 最初に確認したい緊急サイン
  3. 犬の慢性気管支炎で見られる主な症状
    1. 長期間続く咳
    2. 咳の後にオエッとえずく
    3. 運動後や興奮時に悪化する
    4. 疲れやすい・散歩を嫌がる
    5. 発熱や食欲低下は目立たないことがある
  4. 犬の慢性気管支炎の原因
  5. 慢性気管支炎になりやすい犬
    1. 子犬の場合
    2. シニア犬の場合
  6. 慢性気管支炎はほかの犬へうつる?
  7. 慢性気管支炎と似た症状を起こす病気
    1. 気管虚脱との違い
    2. 肺炎との違い
    3. 心臓病との違い
  8. 犬の慢性気管支炎を診断する検査
    1. 問診
    2. 身体検査と聴診
    3. 胸部レントゲン検査
    4. 血液検査
    5. 心臓の検査
    6. 気管支鏡検査
    7. 気管支肺胞洗浄・細胞検査・培養検査
  9. 犬の慢性気管支炎の治療方法
    1. 気道の炎症を抑える治療
    2. 気管支を広げる薬
    3. 咳を抑える薬
    4. 抗菌薬
    5. 酸素治療・入院管理
    6. ネブライザーなどの吸入処置
  10. 慢性気管支炎は完治する?治療期間と予後
  11. 慢性気管支炎の犬の自宅での過ごし方
    1. たばこの煙を避ける
    2. 芳香剤やスプレーを減らす
    3. ほこりをためにくい環境にする
    4. 暑さと急な温度変化を避ける
    5. 適正体重を維持する
    6. 散歩は犬の状態に合わせる
    7. 首への圧迫を減らす
  12. 自宅で記録しておきたいこと
  13. 慢性気管支炎が疑われる時にやってはいけないこと
  14. 動物病院まで安全に移動する方法
  15. 受診時に伝えるとよいこと
  16. よくある質問
    1. Q. 2か月咳が続けば慢性気管支炎ですか?
    2. Q. 慢性気管支炎は自然に治りますか?
    3. Q. 元気と食欲があれば受診しなくてもよいですか?
    4. Q. 抗菌薬を飲めば治りますか?
    5. Q. 加湿器を使えば咳は治りますか?
    6. Q. 散歩は続けてもよいですか?
    7. Q. 慢性気管支炎は命に関わりますか?
  17. まとめ|2か月以上続く咳は慢性気管支炎を含めて検査しよう
  18. 【最新版】私がおすすめする犬用品10選

犬の慢性気管支炎とはどのような病気?

気管支は、気管から枝分かれして肺の内部へ空気を届ける通り道です。

慢性気管支炎では、気管支の粘膜に炎症が続き、粘膜が腫れたり、粘液が過剰に作られたりします。

粘液が気道内にたまると、犬は異物や分泌物を外へ出そうとして咳をします。

炎症が長期間続くと、気管支の壁が厚くなる、気道が狭くなる、気管支が広がったまま戻りにくくなるなど、元へ戻りにくい変化が起こる場合があります。

そのため、慢性気管支炎は短期間の薬だけで完全に治すというより、咳や炎症を抑えながら長期的に管理する病気です。

治療の主な目標は、次のとおりです。

  • 咳の回数と強さを減らす
  • 気道の炎症を抑える
  • 呼吸を楽にする
  • 運動や睡眠への影響を減らす
  • 急な悪化や二次的な感染を防ぐ
  • 生活の質を維持する

症状が落ち着いても炎症が完全になくなったとは限らないため、定期的な診察と生活環境の管理が大切です。

最初に確認したい緊急サイン

慢性気管支炎は、長期間続く咳が中心の病気ですが、急に悪化して呼吸困難を起こすことがあります。

次の症状がある場合は、通常の診療時間まで様子を見ず、受診できる動物病院へ連絡してください。

  • 口を開けたまま苦しそうに呼吸している
  • 首を伸ばし、前足を広げて呼吸している
  • 胸やお腹を大きく動かしている
  • 安静にしていても呼吸が速い
  • 横になれず、座ったまま呼吸している
  • 咳が止まらず息を整えられない
  • 舌や歯ぐきが青紫色または灰色に見える
  • 咳の後にふらつく、倒れる
  • 自力で立てない
  • 呼びかけへの反応が弱い
  • 短時間で急速に悪化している

呼吸が苦しい犬を強く抱きしめたり、仰向けや横向きへ無理に寝かせたりしないでください。

首や胸を圧迫せず、犬が自分で選んだ姿勢をできるだけ保ちながら移動します。

意識が悪い、飲み込みにくそう、激しく咳き込んでいる犬へ、水や食べ物、薬を無理に与えないでください。

安静時も呼吸が荒い場合はこちらも確認してください。
・犬の呼吸が荒い原因とは?安静時もハァハァする時の危険サインと受診目安

犬の慢性気管支炎で見られる主な症状

慢性気管支炎の代表的な症状は、長期間続く咳です。

咳以外の全身症状が目立たないまま、少しずつ進行する犬もいます。

  • 2か月以上続く慢性的な咳
  • 乾いた「コンコン」「ケホケホ」という咳
  • 痰が絡んだような湿った咳
  • 咳の後にオエッとえずく
  • 寝起きに咳が出る
  • 散歩や運動の後に咳き込む
  • 興奮すると咳が増える
  • 夜間や明け方に咳が出る
  • 冷たい空気で咳が誘発される
  • 以前より疲れやすくなる
  • 散歩や運動を嫌がる
  • 呼吸が速くなる
  • 重症時に呼吸困難を起こす
  • 重症時にふらつく、倒れる

長期間続く咳

慢性気管支炎では、数日だけではなく、数週間から数か月にわたって咳が続きます。

毎日同じ回数とは限らず、気温、湿度、運動量、興奮などによって増減することがあります。

元気と食欲が普段どおりだと、飼い主さんが様子を見続けてしまうこともあります。

しかし、咳が繰り返される状態は、気管支だけでなく気管、肺、心臓などの検査が必要なサインです。

ケホケホ、ガーガーなどの咳が続く場合はこちらも参考にしてください。
・犬の咳の原因とは?ケホケホ・ガーガーする時の危険サインと受診目安

咳の後にオエッとえずく

強く咳き込んだ後に、首を伸ばしてオエッとすることがあります。

飼い主さんには、食べた物を吐こうとしているように見えることがあります。

しかし、胃の内容物を吐く嘔吐ではなく、咳によって喉が刺激された後のえずきである場合もあります。

咳なのか嘔吐なのか分かりにくい場合は、症状を動画に撮影して獣医師へ見せると判断材料になります。

吐きそうなのに何も出ない場合はこちらも確認してください。
・犬が吐きそうで吐かない原因とは?空えずき・咳との違いと受診目安

運動後や興奮時に悪化する

散歩、走った後、来客、食事前、ほかの犬を見た時など、呼吸が速くなる場面で咳が増えることがあります。

気道が狭くなっている犬では、空気を多く取り込もうとした時に気管支への刺激が強くなるためです。

軽い運動でも毎回咳き込む、咳が落ち着くまで時間がかかる場合は、運動量を自己判断で増やさず受診してください。

疲れやすい・散歩を嫌がる

慢性気管支炎が進行すると、以前と同じ距離を歩けない、途中で止まる、散歩へ行きたがらないなどの変化が見られることがあります。

シニア犬では加齢による変化と思われやすい症状ですが、呼吸器や心臓の病気が関係している可能性があります。

発熱や食欲低下は目立たないことがある

安定している慢性気管支炎では、咳が続いていても元気や食欲が保たれ、発熱が見られないことがあります。

反対に、急に元気や食欲が落ちる、発熱する、呼吸が速くなる場合は、肺炎などの感染や急性悪化を確認する必要があります。

ぐったりした様子が加わった場合はこちらも確認してください。
・犬が元気がない原因とは?ぐったりしている時の受診目安と対処法

犬の慢性気管支炎の原因

犬の慢性気管支炎は、原因をひとつに特定できないことが少なくありません。

気道への刺激や炎症が繰り返されることで、気管支の粘膜が傷つき、慢性的な炎症につながると考えられます。

関連が疑われる要因には、次のものがあります。

  • たばこの煙や受動喫煙
  • 芳香剤、香水、消臭スプレー
  • 殺虫剤や掃除用スプレー
  • ほこりやハウスダスト
  • 大気汚染
  • 繰り返す気道感染
  • 気管や気管支の構造的な異常
  • 気道内の異物
  • 慢性的な気道への刺激
  • 肥満による呼吸への負担

これらの要因がある犬すべてに慢性気管支炎が起こるわけではありません。

また、たばこの煙などを避けるだけで完全に治るとは限りませんが、咳を悪化させる刺激を減らすことは治療の一部になります。

慢性気管支炎になりやすい犬

慢性気管支炎は犬種や体格に関係なく起こる可能性があります。

一方で、中年齢から高齢の小型犬で多く確認される傾向があります。

  • 中年齢以上の犬
  • シニア犬
  • 小型犬
  • 肥満の犬
  • 長期間咳をしている犬
  • 気管虚脱や気管支軟化症がある犬
  • 煙や強い香りにさらされる犬
  • 呼吸器感染症を繰り返している犬

小型犬では、慢性気管支炎と気管虚脱や気管支の虚脱が同時に存在する場合があります。

そのため、小型犬が長期間咳をしていても、慢性気管支炎だけ、または気管虚脱だけと決めつけることはできません。

子犬の場合

慢性気管支炎は中高齢犬で多い病気ですが、子犬にも長引く咳が出ることはあります。

子犬では、ケンネルコフなどの感染症、肺炎、先天的な気道の異常、寄生虫などを優先して確認する必要があります。

咳に元気消失、食欲低下、鼻水、発熱が加わっている場合は早めに受診してください。

シニア犬の場合

シニア犬では、慢性気管支炎のほか、気管虚脱、心臓病、肺の腫瘍などでも咳が続くことがあります。

年齢のせいと考えず、いつから咳が始まったか、運動や睡眠に影響しているかを確認しましょう。

慢性気管支炎はほかの犬へうつる?

慢性気管支炎という状態そのものが、同居犬へ直接うつるわけではありません。

気管支の慢性的な炎症や構造変化が中心であり、感染症とは異なります。

ただし、長引く咳の原因がケンネルコフなどの感染症である場合は、ほかの犬へ広がる可能性があります。

診断がつくまでは、ドッグラン、犬の保育園、ペットホテルなど、犬が集まる場所への参加を控えた方がよい場合があります。

慢性気管支炎と似た症状を起こす病気

犬の咳が長引いていても、必ず慢性気管支炎とは限りません。

似た症状を起こす主な病気には、次のものがあります。

  • 気管虚脱
  • 気管支軟化症
  • 犬伝染性気管気管支炎
  • 肺炎
  • 心臓病
  • 肺水腫
  • 喉頭麻痺
  • 短頭種気道症候群
  • 気道内の異物
  • 肺や気道の腫瘍
  • 肺の寄生虫や真菌感染

気管虚脱との違い

気管虚脱は、空気の通り道である気管が平たくつぶれ、気道が狭くなる病気です。

ガチョウの鳴き声に似た「ガーガー」という咳が知られていますが、咳の音だけで区別することはできません。

慢性気管支炎と気管虚脱が同時に存在し、互いに咳を悪化させることもあります。

興奮時のガーガー咳が目立つ場合はこちらも確認してください。
・犬の気管虚脱とは?ガーガー咳・呼吸困難の症状と治療、受診目安を解説

肺炎との違い

肺炎は、細菌感染や誤嚥などによって、肺に炎症が起こる病気です。

咳のほか、発熱、食欲低下、元気消失、呼吸数の増加などが見られることがあります。

慢性気管支炎の犬でも二次的に感染を起こす可能性があるため、急に全身状態が悪くなった場合は肺炎の確認が必要です。

咳に発熱や元気低下が加わった場合はこちらも確認してください。
・犬の肺炎とは?咳・発熱・呼吸困難の症状と原因、治療・受診目安を解説

心臓病との違い

心臓病でも、咳、呼吸数の増加、疲れやすさなどが見られることがあります。

シニアの小型犬では、心臓病と呼吸器疾患が同時に存在する場合もあります。

聴診、胸部レントゲン、心臓の超音波検査などを組み合わせて原因を調べます。

犬の慢性気管支炎を診断する検査

慢性気管支炎は、ひとつの検査だけで簡単に確定できる病気ではありません。

長期間続く咳があり、感染症、肺炎、心臓病、腫瘍など、ほかの原因を除外しながら診断します。

問診

診察では、咳の期間、音、回数、出やすい時間や状況などを確認します。

  • いつから咳が始まったか
  • 毎日咳をしているか
  • 乾いた咳か、湿った咳か
  • 寝起きや夜間に多いか
  • 運動や興奮で悪化するか
  • 咳の後にえずくか
  • 犬が集まる場所へ行ったか
  • 自宅に喫煙者がいるか
  • 芳香剤やスプレーを使用しているか
  • 過去に呼吸器疾患や心臓病があるか
  • 現在使用している薬

診察室では咳が出ないこともあるため、自宅で撮影した動画が役立ちます。

身体検査と聴診

呼吸数、呼吸の仕方、舌や歯ぐきの色、体重などを確認します。

聴診では、気管支や肺から異常な呼吸音が聞こえないか、心雑音がないかを調べます。

聴診で明確な異常がなくても、慢性気管支炎を完全に否定できるとは限りません。

胸部レントゲン検査

胸部レントゲン検査では、気管支や肺の変化、心臓の大きさなどを確認します。

慢性気管支炎では、気管支の壁が目立って見えることがあります。

同時に、肺炎、肺水腫、腫瘍、気管虚脱などの可能性も調べます。

ただし、慢性気管支炎があっても、レントゲンで変化が目立たない場合があります。

血液検査

炎症、感染、全身状態、治療薬を使用できる状態かなどを確認します。

血液検査だけで慢性気管支炎を確定することはできませんが、ほかの病気との区別や治療計画に役立ちます。

心臓の検査

心雑音、心臓の拡大、安静時の呼吸数増加などがある場合は、心臓の超音波検査や追加検査が行われることがあります。

慢性気管支炎と心臓病が同時に存在する場合は、両方を考慮した治療が必要です。

気管支鏡検査

気管支鏡検査では、細い内視鏡を使い、気管や気管支の内側を確認します。

粘膜の赤み、腫れ、粘液、気管支の狭まり、異物などを直接確認できる場合があります。

検査には麻酔が必要になるため、犬の呼吸状態や年齢、持病などを考慮して実施の可否が判断されます。

気管支肺胞洗浄・細胞検査・培養検査

気管や気管支から分泌物を採取し、炎症細胞や細菌などを調べることがあります。

細菌感染が疑われる場合は、培養検査や薬剤感受性検査によって、適した抗菌薬を選ぶ材料にします。

慢性気管支炎だからといって、すべての犬に細菌感染があるわけではありません。

犬の慢性気管支炎の治療方法

慢性気管支炎の治療は、咳の強さ、呼吸状態、検査結果、併発している病気によって異なります。

一度の治療で完全に終わるとは限らず、症状を確認しながら薬や生活管理を調整します。

気道の炎症を抑える治療

慢性気管支炎では、気管支の炎症を抑えるための薬が治療の中心になることがあります。

内服薬のほか、犬の状態によっては吸入による治療が検討されます。

薬の種類、量、期間は犬によって異なります。

長期的に使用する場合は、症状だけでなく副作用の有無も定期的に確認します。

気管支を広げる薬

気道の狭まりや呼吸状態によっては、気管支を広げて呼吸を楽にする薬が使用されることがあります。

すべての慢性気管支炎の犬に必要とは限らず、心臓の状態やほかの薬との組み合わせを含めて獣医師が判断します。

咳を抑える薬

咳が激しく、睡眠や日常生活に強く影響している場合は、咳を抑える薬が検討されることがあります。

ただし、気道に多くの分泌物がある場合や肺炎がある場合は、咳を強く抑えることが適さない可能性があります。

市販の咳止めを自己判断で使用せず、診断を受けてください。

抗菌薬

細菌感染が確認された、または強く疑われる場合は、抗菌薬が使用されることがあります。

慢性気管支炎という病名だけで、すべての犬に抗菌薬が必要になるわけではありません。

以前処方された抗菌薬や、家に残っている薬を自己判断で使用しないでください。

酸素治療・入院管理

呼吸困難や酸素不足がある犬では、酸素室などで酸素を補う治療が優先されます。

呼吸が苦しい犬は、保定や検査による興奮だけでも状態が悪化する可能性があります。

重症の場合は入院し、呼吸状態や酸素化、薬への反応を確認します。

ネブライザーなどの吸入処置

犬の状態によっては、ネブライザーなどを使い、気道へ水分や薬を届ける治療が行われることがあります。

家庭用の加湿器や蒸気を自己流で治療の代わりに使用したり、薬剤や精油を混ぜたりしないでください。

自宅で行う吸入処置は、使用する機器や薬、時間について獣医師から具体的な指示を受けた場合に限ります。

慢性気管支炎は完治する?治療期間と予後

慢性気管支炎では、気管支に長期間の炎症や構造変化が起きているため、完全に元の状態へ戻すことが難しい場合があります。

治療の目標は、咳を完全になくすことだけではなく、症状をできるだけ減らし、呼吸と生活の質を維持することです。

薬と生活管理によって、長期間安定して生活できる犬もいます。

一方、気管虚脱、気管支拡張症、肺炎、心臓病などを併発している場合は、治療が複雑になることがあります。

咳が減ったからといって、処方薬を自己判断で中止しないでください。

症状に合わせて薬の量や種類を調整する必要があるため、指定された再診日を守りましょう。

慢性気管支炎の犬の自宅での過ごし方

たばこの煙を避ける

たばこや加熱式たばこの煙は、犬の気道を刺激する可能性があります。

犬がいる部屋だけでなく、同じ住宅内や車内での喫煙を避けましょう。

窓を開けるだけでは煙や付着した成分を十分に避けられないことがあります。

芳香剤やスプレーを減らす

香水、芳香剤、消臭スプレー、殺虫剤、ヘアスプレー、強い香りの洗剤などで咳が誘発される犬がいます。

犬の近くでスプレーを使用せず、症状との関係が疑われる製品は使用を控えます。

アロマオイルや精油も、呼吸器疾患の治療目的で使用しないでください。

ほこりをためにくい環境にする

寝床、カーペット、布製品などへたまるほこりが刺激になる場合があります。

犬を別の部屋へ移動してから掃除を行い、掃除直後に舞い上がったほこりを吸わせないようにします。

空気清浄機は補助になる場合がありますが、使用するだけで病気が治るわけではありません。

暑さと急な温度変化を避ける

暑い環境では呼吸数が増え、咳や呼吸への負担が大きくなります。

夏は室温を調整し、暑い時間帯の散歩を避けてください。

冬も暖かい室内から冷たい屋外へ急に出ると、咳が誘発される犬がいます。

服装や散歩時間を調整し、急激な温度変化を避けましょう。

適正体重を維持する

肥満は胸や呼吸への負担を増やし、咳や運動不耐性を悪化させる可能性があります。

ただし、呼吸器疾患の犬へ急に運動を増やして減量させるのは危険です。

食事量と安全な運動量を、獣医師と相談して調整してください。

散歩は犬の状態に合わせる

咳が落ち着いている犬では、状態に合わせた軽い散歩を続けられることがあります。

運動を完全にやめる必要があるとは限りませんが、長距離の散歩、全力で走る遊び、暑い時間の運動は避けます。

散歩中に咳、呼吸の荒さ、立ち止まりが見られたら、その場で運動を中止してください。

首への圧迫を減らす

首輪が引かれると、咳が誘発される犬がいます。

散歩では、首への圧力を減らしやすいハーネスを検討しましょう。

胸を強く締めつける製品や、抜けやすいサイズは避け、犬の体形に合うものを選んでください。

自宅で記録しておきたいこと

  • 1日に咳をする回数
  • 咳が続く時間
  • 咳の音
  • 寝起き、夜間、運動後など出やすい時間
  • 興奮との関係
  • 呼吸数と呼吸の仕方
  • 散歩できる距離
  • 食欲と元気
  • 体重の変化
  • 薬を使用した時間
  • 薬を使った後の変化

咳の回数を毎回正確に数える必要はありません。

「夜に増えた」「散歩後に毎回出る」「薬を始めてから減った」など、変化が分かる形で記録すると再診時に役立ちます。

咳や呼吸の動画を撮影できる場合は、犬を興奮させず自然な状態で撮影してください。

慢性気管支炎が疑われる時にやってはいけないこと

  • 人間用の咳止めを与える
  • 人間用の風邪薬を与える
  • 残っている抗菌薬を使用する
  • 処方薬の量を自己判断で増減する
  • 咳が減ったため薬を急に中止する
  • 運動させて痰を出そうとする
  • 激しく胸や背中をたたく
  • 蒸気を吸わせるため浴室へ閉じ込める
  • 加湿器へ精油や薬剤を入れる
  • 首輪で強く引っ張る
  • 呼吸が苦しいのに翌日まで待つ

人間用の薬には、犬に危険な成分や量が含まれている可能性があります。

咳を抑える薬が必要かどうかも、肺炎や気道分泌物の有無によって異なります。

自宅で咳だけを止めようとせず、原因を確認してから治療を受けてください。

動物病院まで安全に移動する方法

呼吸が苦しそうな場合は、受診前に動物病院へ電話します。

咳の期間、現在の呼吸状態、舌や歯ぐきの色、意識の状態を伝えてください。

  • 車内を事前に涼しくする
  • 首輪や服で首と胸を締めつけない
  • 無理に歩かせない
  • 犬が楽に呼吸できる姿勢を保つ
  • 顔の周囲を布で覆わない
  • 車内で興奮させない
  • 水や食べ物を無理に与えない

犬がキャリーへ入ると強く興奮する場合は、無理に押し込まず、動物病院へ運び方を確認してください。

受診時に伝えるとよいこと

  • 咳が始まった時期
  • 咳が2か月以上続いているか
  • 咳が出る時間帯
  • 運動や興奮で悪化するか
  • 咳の後にえずくか
  • 安静時の呼吸が速くないか
  • 散歩できる距離が短くなったか
  • 元気と食欲の変化
  • 発熱や鼻水がないか
  • 犬が集まる場所へ行ったか
  • 自宅に喫煙者がいるか
  • 使用している芳香剤やスプレー
  • 過去の呼吸器疾患や心臓病
  • 現在使用している薬

咳や呼吸の動画がある場合は、診察時に見せてください。

動画を撮るために走らせたり、首輪を引いて咳を再現したりしないでください。

よくある質問

Q. 2か月咳が続けば慢性気管支炎ですか?

咳が2か月以上続くことは慢性気管支炎を考える目安になりますが、期間だけでは診断できません。

気管虚脱、肺炎、心臓病、感染症、腫瘍など、ほかの病気を除外する必要があります。

Q. 慢性気管支炎は自然に治りますか?

一時的に咳が減ることはありますが、慢性的な気道の炎症や構造変化が自然に元へ戻るとは限りません。

咳が続く場合は、自然に治ることを期待して待たず、原因を確認してください。

Q. 元気と食欲があれば受診しなくてもよいですか?

慢性気管支炎では、元気や食欲が保たれたまま咳だけが続く場合があります。

元気があることだけで呼吸器疾患を否定できないため、咳が繰り返される場合は受診しましょう。

Q. 抗菌薬を飲めば治りますか?

慢性気管支炎は、細菌だけが原因の病気ではありません。

細菌感染が確認された場合は抗菌薬が必要になることがありますが、すべての犬に有効とは限りません。

Q. 加湿器を使えば咳は治りますか?

極端に乾燥した環境を避けることはできますが、加湿器だけで慢性気管支炎を治すことはできません。

湿度が高すぎる環境や、汚れた加湿器は別の問題につながる可能性があります。

精油、アロマ、薬剤を加湿器へ入れないでください。

Q. 散歩は続けてもよいですか?

呼吸が安定している犬では、状態に合わせた軽い散歩を続けられる場合があります。

ただし、散歩中に咳が増える、呼吸が荒くなる、立ち止まる場合は運動を中止してください。

安全な運動量は、症状と検査結果に合わせて獣医師へ確認しましょう。

Q. 慢性気管支炎は命に関わりますか?

軽い咳を長期的に管理できる犬もいますが、進行すると呼吸困難や酸素不足を起こす可能性があります。

舌や歯ぐきが青紫色、咳の後に倒れる、横になれないほど苦しそうな場合は緊急です。

まとめ|2か月以上続く咳は慢性気管支炎を含めて検査しよう

犬の慢性気管支炎は、気管支に慢性的な炎症が続き、長期間の咳や過剰な粘液分泌を起こす呼吸器疾患です。

主な症状には、次のものがあります。

  • 2か月以上続く咳
  • 乾いた咳や湿った咳
  • 咳の後のえずき
  • 寝起き、運動後、興奮時の悪化
  • 疲れやすさ
  • 散歩や運動を嫌がる
  • 進行時の呼吸困難

慢性気管支炎は、咳の期間だけで診断することはできません。

気管虚脱、肺炎、心臓病、感染症、腫瘍などを除外するため、胸部レントゲン、血液検査、心臓検査、気管支鏡検査などが必要になる場合があります。

治療では、気道の炎症を抑える薬、咳や呼吸状態に合わせた薬、体重管理、煙や強い香りを避ける生活環境の調整などが行われます。

口を開けて呼吸する、舌や歯ぐきが青紫色になる、咳の後に倒れる、反応が弱い場合は、すぐに動物病院へ連絡してください。


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