
愛犬が、こちらの話を聞きながら首をかしげている。
かわいいしぐさに見えるものの、最近は同じ方向へ傾けることが増えた。
首が傾いたまま戻らず、歩くとふらついている。
このような変化があると、「音を聞いているだけ?」「耳や脳に異常があるのでは?」と心配になりますよね。
犬は、聞き慣れない音や飼い主の声へ注意を向けた時に、一時的に首をかしげることがあります。
音への反応として数秒だけ首を傾け、すぐ普段の姿勢へ戻り、歩き方や耳の状態にも変化がなければ、自然なしぐさの可能性があります。
一方で、首が同じ方向へ傾いたまま戻らない状態は「斜頸」と呼ばれます。
斜頸には、外耳炎、中耳炎、内耳炎、前庭疾患、脳炎、脳腫瘍、脳血管の異常などが関係することがあります。
特に、目が小刻みに揺れる、まっすぐ歩けない、同じ方向へ倒れる、嘔吐するといった症状がある場合は注意が必要です。
首を手でまっすぐに戻したり、耳掃除やマッサージをしたりせず、転倒しない安全な場所で安静にしてください。
この記事では、犬が首をかしげる主な原因、正常なしぐさと斜頸の違い、すぐ受診すべき危険サイン、自宅での確認方法を解説します。
■■ この記事でわかること
- 犬が首をかしげる主な理由
- 自然なしぐさと斜頸の違い
- 耳の病気で首が傾く理由
- 前庭疾患で見られる症状
- 脳や神経の病気を疑うサイン
- すぐ受診すべき危険な状態
- 短時間様子を見られる可能性があるケース
- 自宅でできる確認と安全対策
- 動物病院で行われる検査と治療
■■ 犬が首をかしげるのは普通?

犬が首をかしげる行動には、健康な犬にも見られる一時的なしぐさと、体の異常によって頭が傾いている状態があります。
重要なのは、首を傾ける時間、向き、回数だけでなく、目、耳、歩き方、意識の状態を一緒に確認することです。
■ 音や声へ反応して一瞬だけかしげる
飼い主の声、聞き慣れない音、おもちゃの音などへ注意を向けた時に、犬が一瞬だけ首を傾けることがあります。
次のような状態であれば、自然なしぐさの可能性があります。
- 音がした時だけ首をかしげる
- 数秒で普段の姿勢へ戻る
- 左右どちらにも傾けることがある
- 目の揺れやふらつきがない
- 耳をかく、頭を振る行動がない
- 元気と食欲が普段通り
- まっすぐ歩ける
首をかしげる以外に変化がなく、音への反応が終わるとすぐ戻る場合は、緊急性が低い可能性があります。
■ 首が傾いたまま戻らない状態は斜頸
頭が左右どちらかへ傾いた状態が続き、自分でまっすぐに戻せない状態を斜頸といいます。
斜頸では、耳の奥や脳など、体のバランスを保つ仕組みに異常が起きている可能性があります。
- 同じ方向へ傾いたまま戻らない
- 音がなくても傾いている
- まっすぐ歩けない
- 同じ方向へ倒れる
- 目が小刻みに揺れる
- ぐるぐる回る
- 吐き気やよだれがある
斜頸に気づいた場合は、かわいい癖や年齢による変化と決めつけず、動物病院へ相談してください。
■■ まず確認したい緊急サイン
首の傾きと一緒に次の症状がある場合は、夜間や休日でも動物病院へ連絡してください。
- 突然首が大きく傾いた
- 自力で立てない
- まっすぐ歩けない
- 同じ方向へ何度も倒れる
- 転がるように横転する
- 目が左右、上下、回転するように揺れる
- 意識がぼんやりしている
- 呼びかけへの反応が弱い
- けいれんした
- 足に力が入らない
- 足先が裏返っている
- 嘔吐を繰り返している
- 大量のよだれが出ている
- 水を飲めない
- 飲んでも吐いてしまう
- 頭や耳を強く痛がっている
- 耳から血や膿が出ている
- 片方の顔や唇が垂れている
- 片方の目を閉じられない
- 左右の瞳孔の大きさが違う
- 頭をぶつけた後から症状が出た
- 薬や有害な物を口にした可能性がある
目の揺れや激しいふらつきがある犬は、人が強いめまいを感じている時のように、立つことや食べることが難しくなる場合があります。
歩けるか確認するために何度も立たせず、転倒しない場所で休ませて受診してください。
■ けいれんや意識障害がある場合
首の傾きに、けいれん、意識の低下、手足の麻痺などが重なる場合は、脳の異常が疑われます。
発作中の犬を押さえつけたり、口の中へ手や物を入れたりしないでください。
周囲の家具や段差から離し、発作の時間を測りながら動物病院へ連絡しましょう。
■■ 犬が首をかしげる主な原因

■ ① 音や声への注意・好奇心
犬は、聞き慣れない音や飼い主の声へ注意を向けた時に、一時的に首をかしげることがあります。
音への反応が終わるとすぐに頭が戻り、普段通り歩けている場合は、自然なしぐさの可能性があります。
ただし、今までは見られなかったのに急に回数が増えた場合や、いつも同じ側へ傾ける場合は、耳や神経の状態も確認してください。
■ ② 外耳炎・耳垢・耳の異物
耳の入り口から鼓膜までに炎症が起こる外耳炎では、かゆみや痛みによって頭を傾けたり、何度も振ったりすることがあります。
耳垢の増加、植物の種などの異物、耳の中の傷も原因になります。
- 耳を後ろ足で繰り返しかく
- 頭を激しく振る
- 耳を床や家具へこする
- 耳から強いにおいがする
- 耳垢が増えた
- 耳の入り口が赤い
- 耳を触ると嫌がる、鳴く
- 片方の耳だけを気にする
外耳炎だけでは強い斜頸やふらつきが出ないこともあります。
首の傾きや歩行異常がある場合は、炎症が耳の奥まで影響していないか確認する必要があります。
■ ③ 中耳炎・内耳炎
鼓膜の奥にある中耳や、平衡感覚に関係する内耳へ炎症が広がると、首の傾きやふらつきが起こることがあります。
外耳炎が悪化して広がる場合がありますが、耳の入り口がきれいに見えても、中耳や内耳に異常が隠れていることがあります。
- 首が同じ側へ傾いている
- 目が揺れている
- まっすぐ歩けない
- 同じ方向へ倒れる
- 耳を触ると強く痛がる
- 口を開けるのを嫌がる
- 片側の顔が垂れている
- 片方の目を閉じにくい
- よだれや嘔吐がある
中耳炎や内耳炎は長期的な治療が必要になる場合があります。
市販の耳洗浄液や以前の点耳薬を自己判断で使用せず、耳の奥の状態を確認してもらいましょう。
■ ④ 末梢性前庭疾患
内耳や、内耳から脳へつながる神経に異常が起こるタイプを末梢性前庭疾患と呼びます。
中耳炎・内耳炎、耳の奥のできもの、外傷などが原因になる場合があります。
また、シニア犬では、詳しい検査をしても明確な原因が見つからない特発性前庭疾患が見られることがあります。
- 突然首が傾いた
- 目が小刻みに揺れる
- ふらついて立てない
- 同じ方向へ倒れる
- ぐるぐる回る
- 吐き気や嘔吐がある
- よだれが増える
- 食事や水を取れない
特発性前庭疾患では数日で眼振やふらつきが軽くなることもありますが、自宅で原因を判断することはできません。
脳の病気や耳の感染との区別が必要なため、初めて症状が出た時は早めに受診してください。
■ ⑤ 中枢性前庭疾患・脳の病気
脳幹や小脳など、脳にある平衡感覚の仕組みに異常が起こると、首の傾き、眼振、ふらつきなどが現れます。
原因には、脳炎、脳腫瘍、脳血管の異常、外傷などがあります。
次の症状が重なる場合は、脳の異常に注意が必要です。
- 意識がぼんやりしている
- 呼びかけへの反応が弱い
- けいれんがある
- 複数の足に力が入らない
- 足先の位置をうまく戻せない
- 顔や体に左右差がある
- 上下方向に目が揺れる
- 症状が徐々に悪化している
- 食欲や性格にも変化がある
見た目だけで末梢性と中枢性を正確に区別することはできません。
神経学的な診察や画像検査が必要になることがあります。
■ ⑥ 頭や首の外傷
交通事故、転落、家具への衝突などで頭や首を傷めると、首を傾ける、ふらつく、意識が低下するといった症状が出ることがあります。
- 事故や転落の直後から傾いている
- 頭や首を触ると痛がる
- 瞳孔の大きさが左右で違う
- 鼻や耳から血が出ている
- 嘔吐している
- ぐったりしている
- けいれんした
事故後に一度元気そうに見えても、時間がたってから神経症状が現れることがあります。
首を動かしたり歩かせたりせず、体を安定させて緊急受診してください。
■ ⑦ 首の痛み・筋肉や頸椎の異常
首の筋肉や関節、頸椎などに痛みがあると、痛みを避けるために頭を傾けた姿勢を取ることがあります。
前庭疾患による斜頸とは異なり、次のような痛みのサインが目立つ場合があります。
- 頭を上げたり下げたりしたがらない
- 首を動かすと鳴く
- 抱っこを嫌がる
- 頭を低くしたまま動かない
- 食器まで首を下げにくそうにする
- 前足に力が入りにくい
痛い場所を確かめるために首を左右へ曲げたり、マッサージしたりしないでください。
■ ⑧ 薬・中毒物質の影響
一部の薬の影響や中毒によって、ふらつき、眼振、首の傾きなどの神経症状が出る場合があります。
人間用の薬、殺虫剤、薬品などを口にした可能性がある場合は、症状が軽くてもすぐ動物病院へ連絡してください。
自宅で吐かせようとせず、商品名、成分、食べた量、時間が分かる物を用意しましょう。
処方薬を使用してから症状が出た場合も、自己判断で追加や中止をせず、薬の名前と使用量を伝えてください。
■ ⑨ 生まれつきの前庭異常
まれに、子犬の頃から平衡感覚に異常があり、首の傾きやふらつきが見られることがあります。
生まれつきに見えても、耳の感染、外傷、低血糖など、治療が必要な原因との区別が必要です。
子犬がまっすぐ歩けない、頻繁に倒れる、食事をうまく取れない場合は、早めに診察を受けてください。
■■ 首の傾きと一緒に確認したい症状

■ 目が揺れている
犬の意思とは関係なく、目が左右、上下、回転するように動く状態を眼振といいます。
眼振と首の傾きが同時にある場合は、前庭系の異常が疑われます。
目を手で止めようとしたり、顔を固定したりせず、動きが分かる動画を撮って受診してください。
■ ふらつく・同じ方向へ倒れる
前庭の異常がある犬は、体のバランスを保てず、首が傾いている方向へ倒れることがあります。
転倒によって頭や足を傷つける可能性があるため、歩かせず、段差のない場所で休ませてください。
■ ぐるぐる回る
同じ方向へ円を描くように歩く状態は、前庭や脳の異常で見られることがあります。
家具や壁へぶつかる危険があるため、狭く安全な範囲へ移し、早めに受診しましょう。
■ 嘔吐・よだれ・食欲低下
平衡感覚の異常によって強い吐き気が起こると、よだれ、嘔吐、食欲低下が見られることがあります。
水を飲んでも吐く、自力で飲めない場合は、脱水を起こす可能性があります。
口へ水や食べ物を流し込まず、動物病院へ相談してください。
■ 耳をかく・頭を振る・耳が臭い
耳のかゆみ、痛み、耳垢、においがある場合は、外耳炎や中耳炎などが関係している可能性があります。
耳の中へ綿棒を入れたり、洗浄液を流し込んだりしないでください。
耳の奥の状態によっては、洗浄や薬が適さない場合があります。
■ 顔の左右差・まばたきの異常
中耳や内耳の周囲には、顔の筋肉や目の動きに関係する神経があります。
片側の唇や耳が垂れる、食べ物をこぼす、片方の目を閉じられない場合は、神経が影響を受けている可能性があります。
目を閉じられない状態が続くと、目の表面が乾いて傷つくこともあるため、早めに受診してください。
■■ 短時間様子を見られる可能性があるケース
次の条件がすべて当てはまる場合は、短時間様子を見られる可能性があります。
- 音や飼い主の声に反応した時だけかしげる
- 首の傾きが数秒で戻る
- 音がない時は普段通りの姿勢
- 左右どちらにも傾けることがある
- 目の揺れがない
- まっすぐ歩ける
- ふらつきや転倒がない
- 耳をかく、頭を振る行動がない
- 耳垢やにおいの変化がない
- 元気と食欲が普段通り
今後の変化を確認するため、首をかしげた時の様子を動画に残しておきましょう。
同じ方向へ傾ける回数が増える、傾いた状態が長くなる、耳や歩き方に変化が出た場合は受診してください。
首が傾いたまま戻らない斜頸は、長時間様子を見る状態ではありません。
■■ 早めに動物病院を受診したいケース

- 首が傾いたまま数分以上戻らない
- 毎回同じ方向へ傾ける
- 首をかしげる回数が急に増えた
- まっすぐ歩きにくそうにする
- 軽いふらつきがある
- 耳を繰り返しかく
- 頭を何度も振る
- 耳のにおいや耳垢が増えた
- 耳を触ると嫌がる
- 食欲が落ちている
- よだれが増えている
- 一度だけ嘔吐した
- 元気がなく寝ている時間が増えた
- 顔やまばたきに左右差がある
- シニア犬で突然症状が出た
- 子犬が繰り返し転倒する
立てない、激しい眼振、意識障害、けいれん、繰り返す嘔吐がある場合は、早めではなく緊急受診が必要です。
■■ 子犬・成犬・シニア犬で注意点は違う?
■ 子犬の場合
子犬では、耳の感染、先天的な前庭異常、外傷、中毒などに注意します。
体が小さく、転倒や嘔吐の影響を受けやすいため、ふらついて食事や水を取れない場合は早めに受診してください。
ワクチン接種が完了していない子犬では、元気消失やほかの神経症状がある場合、長く様子を見ないことが大切です。
■ 成犬の場合
成犬では、外耳炎、中耳炎、内耳炎、外傷、脳炎、中毒などが考えられます。
片方の耳を繰り返しかく、頭を振る、耳からにおいがする場合は、耳の奥へ炎症が広がる前に診察を受けましょう。
■ シニア犬の場合
シニア犬では、特発性前庭疾患、中耳炎・内耳炎、脳腫瘍、脳血管の異常などに注意が必要です。
突然首が傾き、目が揺れ、立てなくなると、飼い主は強い不安を感じると思います。
特発性前庭疾患で改善するケースもありますが、見た目だけで脳の病気と区別することはできません。
年齢による変化と決めつけず、症状が出た当日に動物病院へ相談してください。
■■ 自宅でできる確認と対応

■ 首が戻るか自然な状態で観察する
首を手で動かさず、犬が自分で普段の位置へ戻せるかを確認します。
- どちら側へ傾いているか
- 何秒または何分続くか
- 音がなくても傾いているか
- 一日に何回起こるか
- 毎回同じ方向か
傾いたまま戻らない場合は、それ以上観察を続けず受診してください。
■ 目の動きを動画に撮る
犬の目が揺れている場合は、安全に撮影できる範囲で動画を撮ります。
顔だけでなく、首の角度や全身の姿勢が分かるように撮影すると診察の参考になります。
顔をつかんで固定したり、まぶたを無理に開いたりしないでください。
■ 歩き方を安全な距離から確認する
犬が自然に歩ける場合だけ、数歩の様子を確認します。
- まっすぐ歩けるか
- 同じ方向へ寄っていかないか
- 足を交差させていないか
- 転倒しないか
- ぐるぐる回らないか
立てない、何度も倒れる犬を、動画や確認のために歩かせないでください。
■ 耳は外から見える範囲だけ確認する
耳の入り口に、赤み、耳垢、液体、出血がないかを見える範囲で確認します。
耳を痛がる犬は、普段おとなしくても噛むことがあります。
綿棒や指を入れたり、奥まで耳を広げたりせず、においと外見だけを確認してください。
■ 転倒しない環境を作る
ふらつきがある犬は、家具、階段、段差、水入れなどへぶつかる可能性があります。
- 階段や玄関へ行けないようにする
- 滑りにくいマットを敷く
- 家具の角をクッションで保護する
- 狭く平らな場所で休ませる
- 高いソファやベッドへ乗せない
- 照明を暗くしすぎない
犬が横へ倒れる場合は、周囲へ丸めた毛布やクッションを置きます。
■ 食事や水を無理に与えない
吐き気やふらつきが強い犬は、飲み込む動作がうまくできない場合があります。
自分から飲めず、飲んでも吐く場合は、口へ水や食べ物を流し込まないでください。
点滴や吐き気を抑える治療が必要になることがあります。
■ 安全に動物病院へ運ぶ
小型犬は、タオルや毛布を敷いたキャリーへ寝かせ、体が転がらないように支えます。
大型犬は、毛布を担架のように使い、できれば複数人で運んでください。
頭を傾けていても、手でまっすぐに固定する必要はありません。
犬が楽な姿勢を保ち、吐いた物が喉へ詰まらないように注意して移動しましょう。
■■ 犬が首をかしげている時にやってはいけないこと

■ 首を手でまっすぐに戻す
斜頸は、犬が意識的に首を傾けているとは限りません。
無理に戻すと、首の痛みや不安を強める可能性があります。
■ 首や耳をマッサージする
耳の感染、外傷、頸椎や神経の異常がある場合、マッサージによって症状が悪化する可能性があります。
原因が分かるまでは、首や耳を揉まないでください。
■ 自宅で耳掃除をする
耳垢やにおいが気になっても、綿棒を入れたり、洗浄液を流し込んだりしないでください。
鼓膜や中耳の状態によっては、洗浄や薬が刺激になる場合があります。
■ 以前の点耳薬を使う
以前と同じ耳症状に見えても、今回の原因や鼓膜の状態が同じとは限りません。
残っている点耳薬や市販薬を自己判断で使用しないでください。
■ 歩けるか何度も試す
ふらつく犬を何度も立たせると、転倒して頭や足を傷つける可能性があります。
立てない場合は、安全な場所で横にならせて受診してください。
■ 人間用のめまい薬や吐き気止めを与える
人間用の薬には、犬に適さない成分や用量があります。
吐き気が強くても、自己判断で薬を与えないでください。
■ 水や食べ物を口へ流し込む
ふらつきや意識の低下がある犬へ、シリンジなどで水を流し込むと、気管へ入る危険があります。
自力で飲み込めない場合は、動物病院での水分補給が必要です。
■■ 動物病院で行われる検査と治療

動物病院では、首の傾きが自然なしぐさなのか、耳・前庭・脳・首などの異常によるものかを確認します。
状態に応じて、次のような検査が行われます。
- 意識、姿勢、歩き方の確認
- 目の動きと瞳孔の確認
- 顔や手足の反応を調べる神経学的検査
- 耳の入り口と耳垢の確認
- 耳鏡を使った鼓膜や耳道の確認
- 耳垢の細胞や微生物を調べる検査
- 血液検査
- 血圧測定
- レントゲン検査
- 中耳や内耳を確認するCT検査
- 脳や神経を確認するMRI検査
- 必要に応じた脳脊髄液の検査
検査内容は、症状の強さ、年齢、耳の状態、ほかの神経症状によって異なります。
治療方法も原因によって変わります。
- 吐き気を抑える治療
- 点滴による水分補給
- 安全な姿勢を保つための入院管理
- 外耳炎、中耳炎、内耳炎への治療
- 耳の奥にたまった分泌物への処置
- 感染に対する抗菌薬などの治療
- 脳炎などに対する原因別の治療
- 発作に対する治療
- 耳や脳のできものに対する手術などの治療
- 回復後の歩行補助やリハビリ
特発性前庭疾患が疑われる場合でも、吐き気や脱水が強ければ点滴などの対症治療が必要です。
症状が改善した後も、首の傾きが少し残る犬や再発する犬がいるため、定期的に耳、目、歩き方を確認しましょう。
■■ 受診時に伝えるとよいこと
- いつから首をかしげているか
- 急に始まったか、徐々に増えたか
- 一瞬だけか、傾いたままか
- 右と左のどちらへ傾いているか
- 音への反応として起きているか
- 一日に何回起こるか
- 目が揺れていないか
- まっすぐ歩けるか
- 同じ方向へ倒れないか
- ぐるぐる回っていないか
- 嘔吐やよだれがあるか
- 食事と水を取れているか
- 耳をかく、頭を振る行動があるか
- 耳垢やにおいに変化があるか
- 耳を触ると痛がるか
- 顔やまばたきに左右差があるか
- 意識や反応に変化があるか
- けいれんがなかったか
- 事故や転落がなかったか
- 誤食や中毒の可能性がないか
- 過去に外耳炎や前庭疾患がなかったか
- 現在使用している薬
首の傾き、目の動き、立ち上がり方、歩き方を撮影した動画も診察の参考になります。
■■ よくある質問
■ Q. 話しかけた時だけ首をかしげます
飼い主の声や聞き慣れない音へ注意を向け、一時的に首をかしげている可能性があります。
数秒で戻り、目、耳、歩き方、元気に変化がなければ、短時間様子を見られる場合があります。
■ Q. 首が片側へ傾いたまま戻りません
傾いた状態が続く場合は、自然なしぐさではなく斜頸の可能性があります。
耳の奥や前庭、脳などの異常が考えられるため、ふらつきがなくても当日中に動物病院へ相談してください。
■ Q. 首が傾いて目も揺れています
前庭系の異常が疑われます。
転倒、嘔吐、脱水につながる可能性があるため、歩かせず安全な場所で休ませ、早急に受診してください。
■ Q. シニア犬なので前庭疾患だと思ってよいですか?
シニア犬では特発性前庭疾患が見られますが、中耳炎、内耳炎、脳炎、脳腫瘍などでも似た症状が現れます。
年齢と症状だけで判断せず、初めて発症した時は診察を受けてください。
■ Q. 耳がきれいでも中耳炎や内耳炎になりますか?
耳の入り口に目立つ汚れや赤みがなくても、鼓膜の奥で炎症が起きている場合があります。
首の傾き、眼振、ふらつき、顔の左右差がある場合は、耳の奥を含めた検査が必要です。
■ Q. 自宅で耳掃除をしてもよいですか?
首の傾きやふらつきがある時は、自己判断で耳掃除をしないでください。
鼓膜や中耳の状態によっては、洗浄液や点耳薬を使用できない場合があります。
■ Q. ふらついている犬を散歩させてもよいですか?
転倒や衝突の危険があるため、通常の散歩は控えてください。
排泄が必要な場合も、獣医師へ相談し、体を支えながら必要最低限の移動にします。
■ Q. 数日で改善すれば病院へ行かなくても大丈夫ですか?
前庭疾患では数日で症状が軽くなる場合がありますが、原因が耳の感染や脳の病気であれば治療が必要です。
初めて斜頸や眼振が見られた場合は、改善を待たず動物病院へ相談してください。
■■ まとめ|犬の首が傾いたままなら早めに受診する
犬は、飼い主の声や聞き慣れない音へ注意を向けた時に、一時的に首をかしげることがあります。
数秒で普段の姿勢へ戻り、目、耳、歩き方、元気に変化がなければ、自然なしぐさの可能性があります。
一方で、首が傾いたまま戻らない状態には、次のような原因が考えられます。
- 外耳炎や耳の異物
- 中耳炎・内耳炎
- 末梢性前庭疾患
- 特発性前庭疾患
- 脳炎や脳腫瘍などの脳疾患
- 頭や首の外傷
- 首の痛みや頸椎の異常
- 薬や中毒物質の影響
- 生まれつきの前庭異常
特に、目が揺れる、まっすぐ歩けない、同じ方向へ倒れる、嘔吐する場合は注意が必要です。
意識障害、けいれん、手足の麻痺、繰り返す嘔吐がある場合は、緊急受診してください。
首を手でまっすぐに戻したり、首や耳をマッサージしたり、自己判断で耳掃除や点耳薬を使用したりしないでください。
転倒しない安全な環境を作り、首、目、歩き方が分かる動画を撮って動物病院へ相談しましょう。
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